Mission
Epilogue
Epilogue other ペルセポネ/アンダー
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堕ちる、堕ちる、堕ちる。
まるで海に沈んでいくようにゆったりと、彼らは底のない異空を墜落していっていた。
“来てくれてうれしかったよ……”
彼らが「カナンの地」に辿り着いた時点で、時歪の因子の上限値を示すカウンタードラムは999998を示していた。その数字が何より雄弁に、あと二人の犠牲が必要だと、語っていた。
“ちょっと、綺麗すぎたけどな”
彼は問いかけた。付き合ってくれるか? と。
彼は答えた。弟のワガママに付き合うのなら悪くない、と。
“絶対忘れない……約束”
兄は弟の力となり、弟は一人の少女を助けることを最期の祈りとして、自ら消滅を選んだ。
時歪の因子として、数多の分史世界と共に砕かれたはずの彼らに、両者が混濁してでも意識があるのは、どんな精霊が恵んだ気まぐれか。
兄弟は小さく弱い明滅となって、時の狭間の海に堕ちていく――はずだった。
ふわ。二つの掌が、蒼と翠の明滅を受け止めた。
「初めまして、と言うのもおかしな感じだな。ルドガー・ウィル・クルスニク。ユリウス・ウィル・クルスニク」
息を呑んだ――呑んだ、と生前の体の記憶が感じた。
天空色のマナを惜しげなく零しながら浮遊する女。彼女は、まさか。
「そうだ。ユティが持っていた『道標』のおかげですっかり出そびれた正史世界のミラ=マクスウェルだ」
ミラそっくりでありながら、根本から異なる存在。これが元素精霊の女王の威厳というものか。
「ああ、別に責めているわけではない。むしろこの場に留まれたのを僥倖と感じている。こうして君たちを待ち受けることができたのだからな」
それは無意味な行為だ。何故なら兄弟はすでに魂だけの、消えゆくだけの存在に成り果てた。今のこれは、それぞれの黒い歯車が砕け散るまでの一瞬を引き延ばした時間に過ぎない。
「実は私も君たちと同じような体験があるんだ。一度死して肉体を失ったが、魂だけは四大に救われて、『私』のままでまたジュードたちに会えた。――ここは正史でも分史でもない空間。時歪の因子となった君たちだからこそ辿り着く場所。だからここで君たちを待っていたんだ」
ミラは、何でもないことのように、頼もしく笑んだ。
「私が君たちの肉体を再構成する。年齢は、そうだな、クロノスに成長を速めさせて元に戻してもらう。マクスウェルが私を作った時の応用だ。クロノスもオリジンから言われれば聞かざるをえまい。それでも無理なら2,3年はかかってしまうかもしれんが――構わないか?」
ルドガーは想った――エルとミラのもとへ戻れる。
ユリウスは想った――ユティのもとへ戻れる。
新しく始めるために。終わらせてや
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