暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
ネペント狩り
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
礼儀よく「お構い無く」と言うと本当に何も出てこない。

NPCのおかみさんは、古びたカップに水差しから水をつぐと、ユウキに差し出した。ユウキはわーい、と無邪気に笑って、椅子に腰掛け飲み始めた。

ほんの少し笑い、おかみさんは再び鍋に向き直った。

そこで、水をちょびちょびと飲んでいたユウキが、こちらを見上げて疑念を含んだ声で言う。

「ねぇ、レン。何であの人、鍋の中身を出せないのかな?」

「えっ?んー………」

突然の質問に詰まって、回答に悩んでいると、隣の部屋に続くドアの向こうから、こんこん、と子供が咳き込む音がした。おかみさんが哀しそうに肩を落とす。

更に彼女の頭上に、金色のクエスチョンマークが出現した。

これは、クエスト発生の証。レンは少し驚いた後、声をかける。

「何か困ったことがあるんですか?」

「旅の剣士さん、実は私の娘が………」

──娘が重病にかかってしまって市販の薬草を煎じて(これが鍋の中身らしい)与えてもいっこうに治らず治療するにはもう西の森に棲息する捕食植物の胚珠から取れる薬を飲ませるしかないがその植物がとても危険なうえに花を咲かせている個体がめったにいないので自分にはとても手に入れられないから代わりに剣士さんが取ってきてくれればお礼に先祖伝来の長剣を差し上げましょう。

という大意の台詞をまくし立てるおかみさんをレンとユウキは、ぼけーと見ていた。

ようやくおかみさんが口を閉じ、同時にレンの視界左にクエストログのタスクが更新された。

レンはユウキと顔を見合わせ、同時に頷き、家から飛び出した。

「………行くよ、ユウキねーちゃん」

「…………うん!」

レンとユウキは村の門を潜ると、不気味な夜の森へと足を踏み込んだ。










アインクラッド内部には空がなく、代わりに次層の底が頭上百メートルに広がっているだけなので、太陽を直接目視できるのは朝夕のいっときに限られる。もちろん月も同じだ。

と言っても、日中薄暗かったり夜は真っ暗だったりするわけでもなく、VR空間ならではの空間ライティングによって充分な明度(ガンマ)は保たれている。夜の森でも、もちろん昼間ほどではないが薄青い光が足許までを照らし、走るのに不便はない。

だがそれと、心理的な不気味さは別の問題だ。どれほど周囲に気を配っても、すぐ後ろになにかがいるのでは、という不安が周期的に込み上げてくる。こんな時ばかりはパーティープレイでよかったと思う。

レベル1プレイヤーに与えられている《スキルスロット》は、わずか二つ。

レンはその片方を、道具屋でダガーを買ったときに《短剣(ダガー)》で埋め、もう一つの空きスロットは、あの悪夢のチュートリアルを経て【始ま
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ