四幕 〈妖精〉
2幕
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ループに混じって生計を立てていたようです」
ヴェルは淀みなく言い上げページを繰っていく。
「その後拠点を移し、未開拓地域を単独で渡り歩く。この間に一人でギガントモンスターを7体、通常の魔物を31体撃破しています。これらの死骸から検出された精霊術の痕跡から、政府官僚と識者がフェイリオ・メル・マータの保護を決定。彼女の存在が観測されてからおよそ3ヶ月後、ヘリオボーグ軍事基地に設けられた〈温室〉に保護される。検査の結果、本来エレンピオス人にないはずの霊力野を発見。〈温室〉で10年間彼女を研究。エレンピオスの精霊術研究に大きな飛躍をもたらします。断界殻解放後の政権交代に伴い、彼女の身柄も解放されました。現在は施設での記録を抹消し、現政府が用意した戸籍と学籍に従い、フェイ・メア・オベローンとして某国立女学院に通っています」
ヴェルはパタンと手帳を閉じた。
「以上がフェイ様の略歴になります」
「プライバシーもヘッタクレもねえのな」
「これが仕事ですので」
アルヴィンとヴェルのやりとりの後、ビズリーがルドガーを向いた。
「分かったかな、ルドガー君。君がいかに強大な兵器を手にしているか」
フェイの表情は暗い。冷たいといってもいい。
(分からない。フェイはフェイだ。あの猫が言ってたように、心が止まった可哀想な女の子。それ以外の何者でもない。そんなことより重要なことがある)
「ヴェル。この子の本名、フェイリオ・メル・マータっていったよな」
「ええ。本人申告ですが」
エルをふり返る。信じられない、と全身が訴えている。
「だ、だってあの子は……フェイリオはエルの妹だよ? エルより年下なんだよ!?」
「――ねえエル、妹さんは湖で溺れて亡くなったんだよね」
「う、うん」
ジュードがこめかみを指で叩きながら仮説を述べていく。
「フェイが湖で溺れた日、フェイは何らかの理由で時空を超えて、今から10年前のエレンピオスに現れた。そして10年分成長して16歳になった。そこにさらに、エルがやって来た。エルは特にそういった現象に遭ったりしなくて、年齢は変わらないまま」
「むつかしいこと分かんない〜!」
「うん。簡単に言うと、エルはそのままで、フェイだけ過去にタイムスリップしたんじゃないかってこと」
「タイムスリップ!?」
「んな荒唐無稽な」
「でないと、ここまで状況証拠が揃ってるのに、二人の年齢が逆転してる説明がつかないよ。どんなに荒唐無稽でも、他に可能性がないならそれが真実になりうる」
「出た。優等生の〈ハオの卵〉理論」
アルヴィン、とジュードに窘められ、彼は肩を竦めた。
「じゃあ歳があべこべなだけで、エルとフェイは姉妹なの?」
レイアがずば
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