四幕 〈妖精〉
2幕
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エリーゼとローエンを除いた一行は、再び船と徒歩と列車を経由してトリグラフに戻り、クランスピア社に向かった。
「――お呼びしたのはルドガー様だけなのですが」
ルドガー以外の顔ぶれを見て、ヴェルは軽くルドガーを睨めつけた。
ジュードたちはそれぞれにルドガーに同行するための肩書きを述べ、ヴェルは確認を(おそらく)社長のビズリーに取りに行ったが――
「人望がある」で部外者を入れてしまうビズリーは果たしてそれでいいのかと言いたいルドガーだった。
ヴェルを先頭にルドガーたちは社長室へ入った。
「待っていたよ、ルドガー君」
恐縮する。かのクランスピア社社長じきじきに「待っていた」などと言われれば、大概のトリグラフ市民はルドガーと同じになるはずだ。
ルドガーは回収したデータディスクをビズリーに渡した。
ビズリーからユリウスの行方について問われたが、これには首を振って返しておいた。列車テロの日からルドガーなりに動いてはいるのだが、ユリウスの行方は杳として知れない。
「さて。君にいい話と悪い話と、どちらでもある話がある。どれから聞きたい?」
聞いてみると、いい話のほうは、クランスピア社のエージェントのスカウト。悪い話のほうは、警察がルドガーを公開手配するとのものだった。
ビズリーは、ルドガーがエージェントになるなら警察に圧力をかけてもいいと言い添えた。
(選択の余地ゼロじゃないかよ。一発逆転とは言わないから、せめて3択目がちょっとでもいいもんでありますように)
内心祈りつつ、ルドガーはビズリーに「どちらでもある話」を尋ねた。
「これは君が、というより、君が最近連れ歩いている彼女の話だが」
ビズリーが示したのは、フェイ。後ろにいたエルたちが一斉にフェイに注目する。
「エレンピオスにこんな都市伝説がある。『純エレンピオス人でありながら霊力野が異常発達した人間がいて、ヘリオボーグ研究所で監禁、実験されている』。知っているかね」
「学生時代に聞いたことはあります。ヘリオボーグには〈妖精〉がいる、って」
人というには算譜法を扱えすぎ、精霊というには人の体をしすぎている。そんな少女が鳥籠の虜囚となっている。ロマンとメルヘンと希望と社会の闇が一度に味わえる、典型的な都市伝説だ。
「その〈妖精〉が彼女、フェイ・メア・オベローンだとしたら?」
「――フェイ、が?」
一同の注視の意味が変わった。
ビズリーがヴェルに目をやる。ヴェルは手帳を開いて述べ始めた。
「本名フェイリオ・メル・マータ。生年月日および年齢不詳。プリミア暦4,275年、今から10年前にディール地方にて最初の目撃談を確認。当時は浮浪者のグ
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