暁 〜小説投稿サイト〜
フェアリーテイルの終わり方
四幕 〈妖精〉
2幕
[1/3]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 エリーゼとローエンを除いた一行は、再び船と徒歩と列車を経由してトリグラフに戻り、クランスピア社に向かった。

「――お呼びしたのはルドガー様だけなのですが」

 ルドガー以外の顔ぶれを見て、ヴェルは軽くルドガーを睨めつけた。

 ジュードたちはそれぞれにルドガーに同行するための肩書きを述べ、ヴェルは確認を(おそらく)社長のビズリーに取りに行ったが――
 「人望がある」で部外者を入れてしまうビズリーは果たしてそれでいいのかと言いたいルドガーだった。




 ヴェルを先頭にルドガーたちは社長室へ入った。

「待っていたよ、ルドガー君」

 恐縮する。かのクランスピア社社長じきじきに「待っていた」などと言われれば、大概のトリグラフ市民はルドガーと同じになるはずだ。

 ルドガーは回収したデータディスクをビズリーに渡した。

 ビズリーからユリウスの行方について問われたが、これには首を振って返しておいた。列車テロの日からルドガーなりに動いてはいるのだが、ユリウスの行方は杳として知れない。

「さて。君にいい話と悪い話と、どちらでもある話がある。どれから聞きたい?」

 聞いてみると、いい話のほうは、クランスピア社のエージェントのスカウト。悪い話のほうは、警察がルドガーを公開手配するとのものだった。
 ビズリーは、ルドガーがエージェントになるなら警察に圧力をかけてもいいと言い添えた。

(選択の余地ゼロじゃないかよ。一発逆転とは言わないから、せめて3択目がちょっとでもいいもんでありますように)

 内心祈りつつ、ルドガーはビズリーに「どちらでもある話」を尋ねた。

「これは君が、というより、君が最近連れ歩いている彼女の話だが」

 ビズリーが示したのは、フェイ。後ろにいたエルたちが一斉にフェイに注目する。

「エレンピオスにこんな都市伝説がある。『純エレンピオス人でありながら霊力野(ゲート)が異常発達した人間がいて、ヘリオボーグ研究所で監禁、実験されている』。知っているかね」
「学生時代に聞いたことはあります。ヘリオボーグには〈妖精〉がいる、って」

 人というには算譜法(ジンテクス)を扱えすぎ、精霊というには人の体をしすぎている。そんな少女が鳥籠の虜囚となっている。ロマンとメルヘンと希望と社会の闇が一度に味わえる、典型的な都市伝説だ。

「その〈妖精〉が彼女、フェイ・メア・オベローンだとしたら?」
「――フェイ、が?」

 一同の注視の意味が変わった。

 ビズリーがヴェルに目をやる。ヴェルは手帳を開いて述べ始めた。

「本名フェイリオ・メル・マータ。生年月日および年齢不詳。プリミア暦4,275年、今から10年前にディール地方にて最初の目撃談を確認。当時は浮浪者のグ
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ