青い春
弐 野球という遊び
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見やる。
「真司君、野球が分かるのかい?」
真司は頬を付いたまま、つまらなさそうな顏をしている。
「ま、多少はね。」
ーーーーーーーーーーーー
「カーン!」
「カキーン!」
「ボールフォア!」
「ボールフォア!」
「カキーン!」
次々とランナーがホームインしていく。相手校のスタンドが、ビッグイニングにわあっと盛り上がる。
「タイムお願いします」
小柄なメガネの捕手がタイムをかけ、マウンド上で浅黒い顏を真っ赤にしている藤次に駆け寄る。178センチの藤次に対し、こちらは165センチ。小ささが目立つ。体型は捕手っぽく、またその顔も実直さが滲み出ている。
「お前な、もっとボールを長く持て。同じリズムで投げすぎだ。少しは落ち着けよ」
「んな事くらいわかってますがな!いくらアホなワイでも!」
「分かってるならやるんだよ。」
藤次の投球に苦心しているこの捕手は、日向誠。ネルフ学園野球部の主将を務める二年生だ。
「んもーーあのバカ。まーた1人で野球してェ。」
ベンチでは光が苛立ちを募らせ、スコアを書くペンがギリギリと軋むほどに手に力が入っている。
それに対して、加持といえば、しれっとした顔で、ベンチの隅に足を組んで座っている。
そう甘くないよな。
加持はだいたいこの展開は予想できていた。
今日の相手は、埼玉ではだいたいベスト32くらいの学校。公立とはいえ、部員も学年に20人ほどは居るチームだ。まだ駆け出しで、9人やっと集まったばかりのネルフ学園では、このレベルに対してはどうする事もできないのは分かっていた。
「カキーン!」
また打球が、外野の間を割っていった。
ーーーーーーーーーーーー
試合は、1-15。エースで4番の藤次の先制タイムリー三塁打で初回に先制したが、守備が総崩れ。エラーは出るし、四球は出す。最終的には長打を続けられて大量失点し、五回で試合が終わった。
「残念だったね」
やや気の毒そうにつぶやいた薫に比べ、真司はずっとサッパリした顏をしている。
「いや、さすがに相手はちゃんとした野球部だし最初はこんなものだよ。思ったより鈴原も良かったし、これから楽しみじゃないかな」
「鈴原君?15点も取られたのに?」
「背も高いしサウスポーだし、まだ一年生なのに120キロ中盤くらいの速さは出ていたじゃないか。変化球のコントロールはガタガタだし、投げ方も荒っぽいし短気だけどね。3年になる頃にはそこそこのピッチャーになってるよ。」
「………」
薫は少し驚いた。球場に来る前は乗り気でもなかった真司が、何故か今は饒舌になっている。こんなに自分からペラペラと喋る真司には、薫は初めてお目にかかった。いつもよりイキイキとしてるよ
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