青い春
弐 野球という遊び
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の髪に、ソバカスが目立つ、いかにも田舎っぽい風貌の女の子である。だがその素朴な風貌は何となく憎めない。生真面目でクラスの委員長であり、そして硬式野球部のマネージャーだった。
「この秋の大会で、野球部は初めて公式戦やるの。少しでも多く、見に来てくれたら、あのバカの励みにもなるかなって…」
「あのバカ?」
「ああ、うん…鈴原よ、鈴原」
真司は名前を聞いて、ああ、と心当たりがついた。鈴原藤次の事だ。授業中起きてた試しがない、そのくせ休み時間には誰よりもうるさい。そしてこの委員長…光にいつも一喝される。そういった男だ。いや、もっと違うのかもしれないが、とりあえず真司にはその程度の認識しかない。
「野球かあ…」
「もちろん、見にいくさ。ねぇ、真司君?」
いつの間にか、後ろの席に薫が居た。薫の一言を聞いた光はパッと明るい顔になって
「ほんと?じゃ、あのバカにも言っとくわね!」
そう言って離れていってしまった。
「…………」
真司としては、無理だと言うつもりだった。
「期待させちゃったね」
期待させちゃった張本人の薫が、しれっと他人事のようにつぶやく。
「薫君のせいじゃないか。僕は断ろうと思ったのに」
少しむくれた顔で真司は薫に向き直る。薫は相変わらずの微笑みをその顔に張り付かせている。
「別にいいじゃない。本当に見に行けばいいんだから。僕も行くからさ。いいだろう?」
「」
全く悪びれもしていない薫に、真司は閉口した。
「真司君はもう少し、周りに興味を持った方が良いよ。洞木さんと鈴原君の日常的な夫婦喧嘩についてすら、ピンときてないみたいだったじゃないか。」
「………」
そこから聞いていたのか…と半ば呆れる思いで、真司は薫から目を逸らして窓の向こうを見た。やはり、薫君はお節介だ。集光ビルが、朝日に映えて輝いていた。
ーーーーーーーーーーーーーー
「カァーン!」
甲高い金属バットの音。
打球は右中間を破る。
「よっしゃー!」
三塁ベース上で、打った藤次は左拳を突き上げる。自軍ベンチ、そしてスタンドに向けて。
次の瞬間、スタンドなんて見なければ良かったと藤次は思った。そこに居るのは、光の熱心な誘いにも関わらず、真司と薫の2人だけ。相手のスタンドにそれなりに人が集まってるのもあって、その寂しさが際立っている。
「せっかくのワイの活躍を見とるんが、なんやよー分からん根暗と変人かいな」
自分で勝手に、活躍に水を刺されたように感じて藤次はベース上でむくれた。
ーーーーーーーーーー
「1、2の3。鈴原のツボにそっくりそのままボールが来たなぁ。」
スタンドで藤次の三塁打を見て、真司がつぶやいた。薫が意外そうに真司を
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