青い春
弐 野球という遊び
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第二話
「カァーン!」
「カキィーン!」
室内運動場には金属音が響く。一応、硬式野球部の専用スペースだが、その広さは内野ノックがやっとできるくらい。ネルフ学園はまだ土グランドが完成していない。芝生グランドはサッカーやラグビーなどに割り当てられ、硬式野球部は来年春の土グランドの完成まで室内運動場で我慢である。しかし土グランドの完成の暁には、ここは室内運動場となる。新設校とは思えないほどの設備が整う。
ネルフ学園は、人工進化研究機関NERVの附属中等教育学校で、区分は国立である。第三新東京市は教育特区となり、NERVで得られた研究成果を存分に生かした柔軟なカリキュラムを組む事が許される。予算もふんだんに割かれ、だからこそ創立5年そこらで、グランドがいくつもできたり、立派な校舎が用意されていたりするのだ。
「カキィーン!」
今野球部員が打っているバッティングマシーンも、最新式の試作品だ。同じ第三新東京市にある企業の研究施設から譲り受けたものである。
良いご身分だよなぁ、こいつら。
キャンピングチェアに腰掛けながら、たった9人しか居ない野球部員が真新しい室内運動場と最新式のマシーンを存分に使っている様子を見て、硬式野球部顧問の加持亮司は内心つぶやく。
「こらぁええですわ!めっさ上手なってる気がしますで!」
喜色満面で、浅黒の少年が打ち込む。お調子者のこいつは、鈴原藤次という。関西出身だが、両親が研究者で、第三新東京市に越してきた。高等部から編入生である。学年は1年。1年C組である。
「カーン!」
左打席からのスイングはそれなりに強い。
しかし、次の球が手元で曲がると、思い切り根っこで打ち、手の痺れに顔をしかめた。
「コラァ健介ェ!大会前や!勝手にスライダー混ぜんなや!」
ピッチングマシーンの影から、したり顏をしたメガネの少年が顏を覗かせる。
「だって、最新式のマシンだぜ?120キロの真っ直ぐだけ投げさせるにはもったいないよ」
この少年は相田健介という。鈴原とはベクトルの違う、これまたお調子者だ。野球の情報を集めるのが大好きで、野球ヲタクと表現できるくらいである。最新式のマシンを昨日目の当たりにして、誰よりもその目を輝かせていた。藤次と同じく、1-Cである。
「ガキッ」
「健介ェー!」
「まーた詰まってやんの、ヒャハハ」
顏を真っ赤にする藤次と、手を叩いてはしゃぐ健介。他の野球部員も半ば呆れ顔でその2人の様子を見ている。加持はまた、ため息をついた。
ーーーーーーーーーーーーーー
「野球?」
「うん、野球」
珍しく(?)定刻登校して自分の席に着き、薫も居ないので所在なさげにしていた真司に話しかけてきたのは、洞木光である。おさげ
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