第二十七話
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死角に入り、すぐさまディアの元に駆け寄り治癒術の魔方陣を出現させる。
「上手く出来たよディア。待ってて、もうすぐだから」
遂に魔術の詠唱を終え、カノンノがリカバーを唱えようとした瞬間。
突然、腹部に何か違和感を感じた。
触られたでもないし風を受けたわけでもない、この痛みはそう、何かに噛まれたような・・・
「・・・っえ?」
その考えに至ると、カノンノは視線を自分の脇腹に移した。
目の前には自身の鋭き歯でカノンノに噛みついているサンドファングの姿があった。
噛まれた個所からは止めどなく血が溢れ出てきており、後からとてつもない激痛がカノンノを襲う。
「な・・んで、まだ煙が残っ・・・てて・・・・あぁぁぁ!!!」
サンドファングが顎の力を強めてきてさらに痛みが増しカノンノの言葉は途中で中断させられる。
だがカノンノの悲鳴はいつまでたっても中断されることはなかった・・・
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
地面に膝をつきながら目の前で苦しんでいるカノンノを見ていることしかできない自分が堪らなく悔しかった。
手を伸ばせば触れることができるのに・・・助けることができるのに今は体を動かすことができない。
あの時のように・・・ブラウニー坑道での力が出せたら・・・
その考えに至った瞬間、ディアはハッと目を見開く。
―――そうだあの時の力だ、あの時みたいに恐怖を全く恐れなかったら・・・
ディアは一度瞼を閉じ、ブラウニー坑道での出来事を思い出す。
―――勇気は夢を叶える魔法・・・エミルから教わった最高の言葉、僕は恐怖を恐れない絶対に恐れない!
しかし、あの時のような力が溢れる感覚は全く訪れようとしない。
自身の苛立ちを必死で抑えながらもう一度ブラウニー坑道での記憶を掘り起こす。
だが、いくら記憶を思い出そうともディアには恐怖を恐れない以外の感情しか思い当らなかった。
―――なんで!もし場所が限定されててブラウニー坑道でしかできないとしたら・・・!!
そうなったらカノンノは助けられない。
ギリっと奥歯を噛み締めながらカノンノに視線を移す。
カノンノはサンドファングの噛みつきから解放されたものの、脇腹辺りの服は完全に真っ赤に染まってしまい、そこを両手で抑えながら息を荒くして横たわっていた。
とても動けそうにない。
だが、いくらカノンノが苦しもうとも魔物に情けはない。
そのまま止めを刺そうと尾をギラリと煌めかせながらサンドファングたちは自身の尾を振り上げる。
―――カノンノぉぉぉぉぉおお!!!
ディアが叫ぶもそんな声が魔物に聞こえるはずもなく、そのまま尾を振り下ろす。
・・・そこで、ディアは一つの感情がディアの思考を埋め尽くすのに気付いた。
――
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