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久遠の神話
第六十一話 図書館でその五

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「それを気の遠くなる間続けられて」
「今に至りますね」
「もう止めなければ」
 聡美は彼に語っていく。
「ここで」
「間も無くですね、ですが」
「はい、あの方の望まれるだけのものが手に入るのは」
「そうですね、ですが」
「この戦いで」
 どうしても、そうした口調だった。
「あの方を止めます」
「では及ばずながら」
「はい、日曜に参りましょう」
 男もこう返した。
「そしてですね」
「まずはその場での戦いを止めて」
「またそれからですね」
「剣士達の戦いはこの時代で」
「終わらせますね」
「これまでは失敗してきました」
 聡美は無念の顔で俯いて言った。
「しかしそれはです」
「私がいるからですね」
「よく御存知でいてくれました」
 男がそうであることに心から感謝している、そうした言葉だった。
「貴方もまた同じだというのに」
「人は生まれ変わりますが」
「はい」
「ごく稀にその記憶が残っているか」
 男は語っていく。
「思い出されるか」
「そうなるのですね」
「人は全てを覚えていることは出来ません」
 忘れるということは即ちデータの消去だ、人の脳は寝ている間にそうしてその容量を生理しているのである。
「神とは違い」
「それも人と神の違いですね」
「はい、ですが」
 それでもだというのだ。
「思い出すことも出来るのです」
「忘れていたこともですか」
「そうです、私もまた同じですので」
「神話の頃からの記憶を」
「思い出しました、ではその記憶と」
 それにだった。
「剣を以てです」
「戦って下さい」
「是非共」
 こう話してそのうえでだった。
 聡美と男は今は夜の闇の中に消えた、日曜は迫ろうとしていた。
 それは高代も同じだ、大石のいる教会に入りその礼拝堂で祈りを捧げた、その祈りが終わってからだった。
 立ち上がるとそこに大石がいた、高代はその大石に顔を向けて言った。
「貴方ともです」
「戦うことになりますね」
「はい、私の夢の為に」
 彼もまたこう言うのだった。
「そうさせてもらいます」
「そうですか、では」
「戦うことになりますね」
「貴方は学園を造りたいのでしたね」
「自然に囲まれ身体や心に傷のある生徒達が互いに幸せに育っていける」
「そうした学園をですね」
「まだ。我が国は心身の障害者に至らないところがあります」
 このことは不幸にしてその通りだ、世の中は完璧という訳にはいかず 日本もそこにまだ至っていないのだ。
「ですから」
「それ故にですね」
「私は全ての子達にそれは出来ません」
 彼なりの救済、それはだというのだ。
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