第六十一話 図書館でその四
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「大丈夫だと思いますが」
「私が日本の首相になると」
「そう思いますが」
これが聡美の見立てだった。
「それでもですか」
「悪いか」
「剣士としての戦いは醜いものです」
聡美は唇を噛み締めその整った顔の眉と目を顰めさせて言った。
「欲と欲がぶつかり合い」
「それはその通りだな」
「そしてその欲を集めて」
「欲を集める」
「あの方を止めなければ。犠牲による幸せは偽りでしかないですから」
「何を言っているのかわからないが」
権藤は聡美の今の言葉の全ては理解出来なかった、だがだった。
彼女の言葉の後半、犠牲による幸せについては確かな顔で言ったのだった。
「それはな」
「事実ですね」
「否定出来ない」
「そうですね」
「幸せは本来自分が生み出して手に入れるものでありだ」
「他の方は犠牲にしないものですね」
「私は間違っているのだろう」
このことも自覚していた。権藤は実際のところ愚かでもなくそしてわかっていた、しかしそれでもだったのだ。
「だがだ」
「それでもですね」
「私はその願いの為に戦う」
「偽りの幸せを手に入れられますか」
「私の夢と言えば手前勝手だがな」
夢は往々にして自己中心的なものだ、このことも自覚しての言葉だ。
「それでもだ」
「ですか」
「他に方法があれば降りる」
その剣士の戦いからだというのだ。
「そのつもりだ」
「それを見つけて欲しいと思います」
「そうか、ではだ」
「はい、お話はこれで」
「終わりだ。飲みものを飲んで帰ってくれ」
そのコーヒーをだというのだ。
「そうしてくれ」
「わかりました」
「こうしたもてなししか出来ないがな」
「いえ、お気遣いなく」
聡美もそれはいいとした。
「とても美味しいです」
「だといいがな」
「はい、では」
聡美は権藤の屋敷のコーヒーを飲んだ、そうしてだった。
飲み終えてから悲しい顔で彼に言った。
「では日曜は」
「生きて帰るのは私だけだな」
「そうならないことを祈ります」
権藤にこう告げて去ったのだった。
それからだった、権藤の屋敷から出るとだった。
彼がいた、聡美は彼に対して顔を向けて話した。
「やはり日曜日は」
「その日にですね」
「お願いします」
目でお辞儀をしての言葉だった、聡美にとってはそれしかないといった顔になってそのうえで告げたのである。
「戦いを止める為に」
「わかりました、では」
「あの人の想いはわかるのですが」
「それでもですね」
「それは間違っています」
顔を上げて言ったのだった。
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