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久遠の神話
第六十一話 図書館でその二

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「そうなのです」
「そうだったのか、初耳だ」
「そうです、兄上のことなので」
「お兄さんは宗教家なのか」
「また違いますが」
 権藤もこのことには気付かない、聡美が今言っていることがどういったことを意味しているものなのかを。
 そして聡美も気付いていない、だがここでこう言ってこのことは終わった。
「私は予言は出来ないので」
「私の資質を見てか」
「そう思っただけです」
「私にとって選挙は何でもないか」
「ご安心下さい、必ず当選されます」
「当選してそれからもだな」
「ありますので」
 こう権藤に言うのだった。
「だからです」
「そういうことか。それでだが」
「はい」
「今日ここに来た理由だが」
「戦いのことですが」
 聡美は権藤に応えて即座に切り出した。
「そのことですが」
「戦いか」
「はい、そのことですが」
「結論から言わせてもらうとだ」
 権藤は聡美の言葉を聞いてからこう返した。
「私は戦う」
「あくまで、ですね」
「そうだ、戦い生き残ってだ」
 そしてだというのだ。
「願いを適える」
「この国の首相になりですか」
「そうする」
「そうですか。ですが」
「戦うことは止めて欲しいか」
「貴方達は駒なのですから」
 聡美はここでこの言葉を出したのだった。
「ですから」
「駒?」
「例えばですが」
 聡美はこの場では慎重だった、その慎重さを以てこういうのだ。
「貴方は永遠に戦いたいでしょうか」
「永遠にか」
「はい、互いに永遠に殺し合いたいでしょうか」
「私は政治家になるつもりだ」
 権藤の今の返答はここからだった。
「政治家が戦争をはじめ」
「戦争を終わらせるものですね」
「永遠に戦うことなぞ有り得ない」
「絶対にですね」
「確かに世界は万人が万人に戦いを挑むものかも知れない」
 ホッブズの著書リバイアサンにある言葉である。
「しかしそれを法によって秩序を形成しているのだ」
「それが人間の世界ですね」
「戦いは一時はしてもだ」
「永遠にはですね」
「するものではない」
 これが権藤の聡美の問いへの返答である。
「決してな」
「そういうことですね」
「永遠に戦うことはしない」
「それよりも秩序ですね」
「私はそれを求める人間だ」
 加藤とは違いそうだというのだ。
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