暁 〜小説投稿サイト〜
気まぐれな吹雪
第二章 非平凡な非日常
52、もう一人の“フィリミオ”
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とを可能とした。
 私は、要とは違う」

氷の短剣がつがえられた。

ヤバい。

心の底から思った。

先に動いたのは向こうだった。

走りながら短剣に力を込め、振り切る。

その切っ先から大量の氷柱がオレに向かって飛んできた。

全て鎌で粉砕するものの、引き戻す前にがら空きとなっていた腹部に強烈な蹴りが入った。

「ぐふっ」

重い。

僅かに、しかし確かに骨が折れる音が聞こえた。

体勢を立て直す間もなく更なる斬撃が襲いかかる。

「怒濤の旋風吹雪の如し、ってね」

「!?」

ケラケラと笑いながら言われたその言葉に、一瞬動きが止まる。

その隙を突かれ、気づけばオレの胸には深々と短剣が刺さっていた。

氷でできているせいか、そこだけが異様に冷たい。

だけど、

「やっぱ、所詮は人間だな」

「え……? がは……っ!!」

足元から崩れるフィリミオ。

その理由は、オレが“後ろから”頸動脈に打撃を与えたから。

血は、一滴も流れていない。

「オレがまやかしの一つや二つ使えないとでも思ったか? 神だぞ?」

「ははは……悔しいなぁ」

ぐったりと乾いた笑いを浮かべるフィリミオ。

頸動脈に衝撃を食らうと、体が一時的に麻痺して動かなくなる。

それが効いているらしい。

彼女は最後に「バーカ」と呟くと、ふら……と意識を失った。

それを抱き抱えるようにして支える。

刹那、純白の髪が霞のように消えていき、いつものエメラルドグリーンの短髪へと戻った。

服装も学ランに戻っている。

「お疲れさま、要」

口元に手を当てたあと、オレはそっと、要を床に寝かせた。
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