第二章 非平凡な非日常
51、その差は何が産み出すのか
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明になったままであり、銀と関係があるとも思えない。
だけど、似ているのだ、恐ろしいほどに。
消え入るようなその呟きに対し、銀は小さく微笑んだだけだった。
「悪いが、オレはお前の兄じゃない」
次の瞬間、銀は要の目と鼻の先にいた。
この殺気の中、このスピードで、避ける時間なんてなかった。
ザクッと音を立てて彼女の肉体に鎌が深く深く食い込む。
込み上げる鉄の味は、体の奥から気持ち悪くなる。
「がはっ……」
勢いよく鎌が引き抜かれ、鮮血が飛び散る。
同時に、込み上げていた鉄の味は、赤黒い液体として口の中から吐き出された。
純白の鎌にはべっとりと彼女の血がついて赤く染まっている。
足元から力なく崩れ落ちた要は、ゆっくりと自らの血の海に沈んだ。
その瞳は、見開かれたまま生気を失っていた。
もう彼女はピクリとも動かない。
息をしていないことは、見ればすぐに分かってしまった。
「何だかんだ言って、結局はこうなっちまうんだな……」
ポツリと、小さく銀は呟いた。
その服は返り血で赤く染まっている。
斬りつけたとき、抵抗がなかった訳じゃない。
『兄貴』と言われ、なにも感じなかった訳じゃない。
けれど、なんで抵抗があったのか分からない。
なんでどうでもいいはずの言葉に反応したのか分からない。
なんで、自分はこんなにも彼女に思い入れているのか分からない。
「ごめん、な。けどもう、仕方のねぇことなんだ」
持っていた鎌が砕け散る。
踵を返して立ち去ろうとした、その時だった。
淡く、小さく、儚く、要のチョーカーが輝いた。
しかし背を向けていた彼はそれに気づかない。
刹那、突風が吹き荒れた。
あり得ないことに驚き、足を止め、振り返った。
あり得ないんだ。
この世界で自分の意思ではない『何か』が起こるなんて。
彼の目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。
要の体を純白の炎が包み込んでいた。
まるで、彼女の血を火種にしているかのようにそこから上がり、勢いを増していく。
完全に要の姿が見えなくなったとき、銀は確かに笑い声を聞いた。
要ではない、女の声を。
次の瞬間、炎の中から青い光が迸り、一瞬にして炎を消し去った。
そこにいたのは、
「こんにちは、銀クン♪」
長い白髪を持った少女だった。
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