銃口と軽薄な動きたがり
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えない。視力を上げて伺ってもいいが、そんなことをしてもモアイ子にとって何の得にもならない。
「お前ら、動くなよ」
武装した男は静かに厳かに言った。声を出しても素性はバレないだろうという判断だろうか。モアイ子は取り敢えずこの声を保存しておいた。完全に私怨である。
「…それで、これはなんだ?」
後ろから落ち着いた少年の声がする。
「…」
問われたであろう武装した男は何も話さない。
「…だんまりか。沈黙はフルーツとは、よく言ったものだな」
「ああああの、」
中年男は震えながら口を開いた。
「なんだ?」
「き、帰宅が遅れると、家内に申しても宜しいですか?」
「好きにしろ」
「はははい、有難う御座います」
中年男はペコペコと頭を下げながらスマートフォンをいじりだした。
チン…。9階に着いた。武装した男に急かされるままにモアイ子達はエレベーターを降ろされる。
そして武装したもう1人の男の迎えを早速受ける。
「おいおいこりゃあ大漁じゃねぇか」
もう1人の武装した男はヘラヘラと笑っている。保存した。
「大漁の方が、網からは逃げやすいと思うが?」
「なんだとテメ?」
先程ヘラヘラしていた男(以後、武装Bと呼ぶことにする)は少年を睨んだ。
「いやすまない。折角だからあなた達と雑談でもしようかと思ったのだが」
少年は肩を竦めた。
「なめてんのかオイ?」
武装Bは銃を少年に突きつけた。
「なめてないなめてない。あなたが銃を持ってなかったら私はここで盛大に自分語りを始めていたし、あなたが私の年下に見えたらあなたのことを君と呼んでいた」
「帰らないで自分語りをするんですね」
少年の知り合いだろうか少女が淡々と言った。
「いやなに、凶器も持たずにエレベーターに入って9階に行けなんて言ってくるような人とは長々とお話したいからな」
「そんなことよりっ!」
子連れの女が割って入ってきた。
「子供がいるんです。私達だけでも解放してくれませんか?」
どこまで利他なのか分からないが、確かに正当な要求だ。
「駄目だ」
武装Aは即答した。
「なんですって!」
「誰かを解放しようとすれば隙が出る。その隙を埋めるために労力を割けというのか?」
「あなたそれでも人の子なの!?」
女は叫んだ。それに合わせるように、子供が泣き出した。
「あああああ、大丈夫よ、大丈夫だからね」
女はしゃがんで子供をあやしだした。中年男が視界の端でホッとしている。
「…うーむ、暇だ。仙翁、何か持ってないか?」
少年は仙翁と呼んだもう1人の少年に顔を向けた。
「峰年君、あんまり刺激するもんじゃないよ」
仙翁は困惑の表情だ。
「安心しろ、自重している。それで、トランプは常備しているな?
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