雛は現実を知る
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かった。お前たちの判断を信じるよ。俺も参加すべきとは思っていたからな。少し考えすぎてた」
軽く笑いを顔に貼り付け、彼女達に話しかけた。
話しながらも力が抜けそうになっていた。俺は今、ちゃんと笑えているのか?
「なんだ、結局お兄ちゃんも賛成だったのか」
「まあな、ただ、理想ばかり見るんじゃなく自分の足元も見ないとダメだから、誰かが考えさせることを言わないと。朱里や雛里が反対意見をいってたのはそれもあるんだろう?」
「はい。見えていない事象に注意を喚起するため、反対意見を言うのは軍師の仕事ですから」
「私たちも苦しんでる民達を助けたいです」
お前たちでさえ気づかないんだ。桃香達が気付くわけはない。
「じゃあ決定だね! 私たちは反董卓連合に参加するってことで!」
「「「御意」」」
「了解なのだー!」
「……了解」
「じゃあさっそく準備にとりかかろう。兵士さんの糧食とかも計算しなきゃだし」
「それがですね桃香様……」
言いよどむ朱里を見て他の問題が頭に浮かんだ。
「まだ赴任したてで軍資金等の都合により糧食が……その……連合参加には足りないんです」
「じゃあ持って行けるギリギリの糧食を計算して後は……たかるか」
それしかないからやるしかないだろう。交換条件は手柄の譲渡か先陣か。名を上げるためだとしたら本末転倒だが……まあいい。
「うー……。少し恥ずかしいのだ」
「私もそれは些か気が引けます」
「格好を気にしてちゃ人は救えないよ」
「そうだね。それしかないんだから……。やろう皆!」
頷く皆と同じように首を縦に振りながらも、俺は別の事を考えていた。
雛里の視線に気付かないまま。
†
どこか変だ。違和感を感じる。
桃香様は変わらない。愛紗さんも変わらない。朱里ちゃんも変わらない。鈴々ちゃんも変わらない。
私も……いつも通りだ。
秋斗さんだけが少し違う。
どこかが違う。
気付いてるのは私だけ。
でも何が違うのかわからない。
どうしてだろう。
胸がざわめく。
あの人は何を考えてるの?
秋斗さんはなんて言った?
思い出したらいい。
理想の実現のため、理想ばかりじゃなく自分の足元も、理想……あ。
思考の隅に追いやっていた現実が、私の目の前に姿を現した。
まさか……そんなはずは――
次は自分の言ったことを思い出す。さっきのやり取りをもう一度確認する。黄巾の時の桃香様の言葉が甦る。
そして――自分の足元が崩れ去る。
私たちの理想は……叶わない。
†
今日の準備が終わり、自室で一人考えに耽っていた。
俺は待つしかない。
彼女たちは自分たちが矛盾していることにまだ気付かなかった。
妄信している者は
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