雛は現実を知る
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うとため息が一つ漏れ出た。さすが、軍師達はすごいな。
「むぅー、そんなに難しく考えなきゃいけない事なのかなぁ。圧政に苦しめられている人がいるってだけで十分な参加理由になると思うんだけど」
「もしかしたら違う……と言う訳か」
さすがは桃香というべきか、やはり人の言葉を信じすぎている。それに対して愛紗は考えを深めたようで軍師の注意に思考を傾けた。
「秋斗さんはどう思いますか?」
ずっと黙っていた俺に雛里が聞き、皆の視線が俺へと一斉に集まる。なら……お前達がどれくらいなのか試してみようか。
「どこまでが本当でどこまでが嘘なのかわからない情報に左右されて戦いたくはないな」
「だけど苦しんでいる民がいるかもしれないんだよ?」
「そうだな。だがこんなにごちゃごちゃ入り乱れた状況じゃあ誰が苦しめているかわからないんだがな」
「では参加すべきではない……と?」
そこまでは言いきれない。何故なら――
「でも私たちのような弱小勢力は漢の崩壊が予見される今、先を見て動かなければいつか潰されてしまいます。」
朱里が話す通り、立ち上げたばかりの俺達はそうしないとこの先、生き残れないだろう。乱世を抜けて行くのだとしたら余計に。
「俺が言いたいのは理想の実現のためにはどうするべきか、それを自分たちの状況から判断して、自覚して決めてほしいってことだな」
思考のはざまで揺れてくれ、考えてくれ。自分たちの理想について。自分たちの目指すものについて。
俺の話を聞いた皆は一様に考え始めたようだ。少ししてから桃香が顔を上げ、俺を強い目で見据えてから口を開いた。
「私は……私は参加したい。この情報がどんなに裏があったとしても、そこに苦しんでいる人がいる可能性があるなら、私は助けに行きたい」
一瞬、頭の中が真っ白になった。しかしどうにか思考を続ける。
これが桃香だったな。愛紗は――
「同感です。裏を読み過ぎて助けられなかった、などという事は許せません」
そうか、やはりか。
「鈴々も困ってる人を助けたいのだ!」
朱里と雛里も同意だというようにコクコクと頷いている。
「本当にいいんだな?」
とりあえず、無駄だと分かってはいるが念を押してみると、不思議そうな目で朱里と雛里が見つめてきた。同時に強い瞳で三人が俺に頷いた。
「大丈夫だって秋斗さん! 準備万端整えておけば、どんなことが起こっても対応できるって! こんなに頼もしい仲間がいるんだし!」
俺に向かって満面の笑みで桃香が言い、その通りとばかりに皆も一様に頷いた。
そこじゃないんだよ。しかしそうか……気付かなかったのか。
戦う以外に方法があるんじゃなかったのか?
敵はどんなモノか分かっているのか?
それらの言葉を口から出す前に飲み下し、
「分
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