覇王と黒麒麟
[8/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ずの音が響いて空気が止まる。
確信をもっていなければこんなことを私は言わない。無いとは思うが……もし忠誠を誓っていたら真っ先に否定するか、激怒していたはず。
そしてやはり返答は無言。答えられるわけがない。仮にも主としているのだから。
「沈黙は肯定と受け取るわ。あなたはその剣を預けているだけ。それはなんのため?」
この男は頭がいい。きっとその時も曖昧にぼかしたのだろう。普通ならただの卑怯者にしか思えないが、この男なりの理由があるなら聞いてみましょう。
「心にもないことで偽るのは許さない。あなたはすでに劉備のことを侮辱しているのだから。本心を話しなさい」
逃げられるとは思ってないわよね。
「……なんのためにそれを聞くのですか?」
なるべくこちらに自分を読ませない為か無感情な声で尋ねてくる。無駄なあがきを。
「純粋な興味からよ」
さあ、あなたの底を、全てを見せなさい。
すると徐晃はお手上げといったように両手を肩の高さまで上げ、口を開いた。
「……あなたは厳しい人だ。降参です。確かにその通りです」
「あなたの本心なのだから飾らないで聞かせなさい」
そう、素の徐晃じゃないと意味がない。本心を話すのならば他人行儀では無く自然体で接してこそ人となりが分かるというモノ。ここは、言うならば言葉という刃を交わす戦場なのだから。
「……わかった。俺はあいつの理想が今の世だけじゃ絶対に届かないことを理解している」
やはり。そうじゃないと関羽や諸葛亮のように心酔しているだろう。
「曹操殿、あなたと同じく、王の成長を待っているんだ。あなたは好敵手の為に、俺は世の平穏の為に」
さすがに私の目的も見抜いていた事には少し驚いてしまったが目を細めて先を促す。
「桃香の理想は今の世じゃ無理だ。殺し合いで奪った命の関係者は、笑った世界にいられるわけがないんだから」
家族も友人も恋人も、大切な者を殺されたなら怨まずにいられない。
今は乱世、その理想は治世で唱えるなら少なくともまだ望みがあっただろう。
「いくら殺した兵士の命を背負おうとも、その家族に『平和になりました、だから笑ってください』などと誰が言えるのか」
そんなことが言えるものは大馬鹿か異常者だ。
「あいつの理想は次の世代、その次の世代とずっと繋がなければ叶わないモノ。出来たならいつか遠い未来に叶うモノ」
「そこまでは考えていたのね、あなたも」
「ああ、だからまだ判断しかねている。これから先、戦乱の世を抜けていく上でその理想を持ち続けられるのかもわからないから。それに未だ賊ではない、同等の正義をかざす兵士を殺していない」
確実に起こる未来の出来事。私とはいつか相対するのだから。そして乱世に於いてはそれを行わなければ理想を叶える事など出来はしない。
「だから命を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ