第一話 俺と黒髪ポニーテール
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世界ってのは理不尽で満ち溢れてると思う。何で国の勝手な都合で税金だ何だと色んなもんを強制されなきゃいけねぇんだ?俺、高上穂斑は政治家だの大統領だのに物申したい訳だ。だがまぁ一介の高校生である俺にそんなことしてもどうこうできるような力は無い。情けねぇ限りだが現実ってのは非常なもんだ。で、その一介の高校生の俺が今何でこんな目に合ってるんだ?
腹に風穴開けられて、死にそうになってる。
目の前には金髪でムカつくニヤけ顔の優男。そいつの手は赤く染まってて血まみれなのだとすぐに分かる。当然それは俺の血だ。腸が煮えくり返りそうになるってのはこういう時のことを言うんだろうなと無駄に冷静な頭で考えた。優男が何か言ってるが俺には聞こえない。出血が酷いから体に血が足りてねぇんだろ。ただ分かるのは、俺はこいつを許さねぇ。もしここで死んでも俺は何としてもこいつを殺す。地獄の底まで追いかけて最低でも一発はぶん殴る。優男は俺を一瞥してから、何か投げつけてきた。ぼんやりした視界に映ったのは――駒。チェスで使うルークの駒だ。そんなの俺に投げつけてどうしようってんだ?冷静な頭はこれから死ぬかもしれねぇのに相変わらず無駄な回転力を働かせている。腹を手で一突きしただけでこれってことはどう考えても異常、人間には無理な芸当だ。つまりこいつは人の皮被った何かってことだろう。バカな話だがそう考えないと辻褄が合わねぇどころの話じゃねぇからな。何も無い所がいきなり歪み、穴みたいなもんが優男の前に開いていく。予想的中らしいな、いよいよもってやることが化物じみてやがる。穴の中に消えていく優男の顔を目に焼き付け、内に怒りの灯を宿したまま、藁にもすがる思いで何故か俺はチェスの駒を掴んで、暗闇の中に落ちた……。
―☆★☆★☆―
「あぁ……ねみぃ……」
いつものような気だるい朝を迎え、俺――高上穂斑は外を睨みつける。最近妙に太陽がムカつく。消えてくれねぇかな、なんて無理なことを考えてしまったりするのだ。野球部に所属しているのに少し伸び気味で薄い橙色の髪をくしゃくしゃと掻き毟り、渋々カーテンを開け放って――後悔した。
「うおぉぉぉっ!目が焼けるつか焦げるぅぅぅっ!ぎゃあぁぁぁっ!」
床に落ちて転げ回り、目を必死に押さえる。ヤバい痛すぎる、下手すりゃ死ぬぞこれ。一人茶番をしていると部屋のドアが開き、ヒョコっと可愛い顔が覗いていた。おぉ妹、こんな哀れな兄を見て何が楽しいんだ?笑ってんじゃねぇぞおい。
「お兄ちゃん、楽しそう……」
「穂乃実、喧嘩売ってんのか?どこにも楽しそうな要素ねぇよ」
「ごろごろ転がって、面白そう……」
しばいてやろうかこいつ。俺の妹――高上穂乃実は少し変わっている。ちょっとした変人として近所にも有名である。何が変
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