第百四十六話 闇の仕掛けその七
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だがそれではなかった、足軽はこう言うのだ。
「灰色です、灰色の旗が」
「灰色?本願寺か?」
「急に出て来て村を襲ってきています!」
「何っ、まことか!」
「はい、左様です!」
足軽は切羽詰まった声で叫ぶ。
「このままでは」
「九鬼様、ここはです」
「一刻の猶予もないかと」
「すぐに砦に人を呼びです」
「兵を出しましょう」
「うむ、そうじゃな」
九鬼も後ろに控える者達に応える、そしてだった。
彼はすぐに砦に人をやりそのうえで出て来た彼等と共にその村に向かった、すると彼等の青い具足と旗を見た村人達が来て言って来た。
「ほ、本願寺の者達が急に出て来ました」
「何処からです」
「そして急に我等を襲ってきました」
「鉄砲を撃ち家を焼いてです」
「女子供までも」
「何という奴等じゃ」
ここまで聞いてだ、九鬼は眉を顰めさせた。そしてこう言うのだった。
「我等を攻めるならともかく罪のない村人を襲うとは」
「本願寺とはそういう者達だったのでしょうか」
「まさかと思いますが」
「罪のない村人を襲い容赦なく殺す」
「そうした者達だったとは」
「これはとんでもないことですぞ」
「そうじゃな、ではな」
九鬼は得意とする水の上にはいない、だが。
陸での戦が出来ない訳ではない、それでだった。
率いてきた足軽達にだ、こう言ったのである。
「本願寺の者達を攻めよ!」
「はっ!」
「わかりました!」
「そしてじゃ」
九鬼はさらに言う、次の言葉は。
「民達を逃せ」
「はい、わかりました」
「ではすぐに」
兵達は九鬼の言葉に従い本願寺の兵達に向かうと共に民達を守るのだった。忽ちのうちに戦になっていく。
その戦の中でだ、九鬼は兵達に鉄砲を撃たせ本願寺の兵達を攻めながら言うのだ。
「このことは必ずな」
「はい、殿にもですな」
「お知らせしましょうぞ」
「戦じゃ」
苦いが意を決した顔での言葉だった。
「これは激しい戦になるぞ」
「本願寺とのですな」
「戦に」
「そうじゃ、なる」
九鬼はもうそのことを覚悟していた、そしてだった。
こうした衝突が伊勢だけでなく他の国でも起こった、またどの衝突のことも信長と顕如の下に報として届いた。
顕如は次々と届く報を聞いてだ、怒りを必死に押し殺しながら言った。
「こうなっては止むを得ない」
「では、ですか」
「織田家と」
「これから拙僧自ら鐘を鳴らす」
石山御坊のその大鐘をだというのだ。
「わかったな」
「そうですか、では」
「織田家に対して」
「言った筈じゃ、拙僧に何かをするならよい」
それならというのだ。
「しかし民に手を出すならば」
「その時はでしたな」
「戦を」
「その通りよ」
意を決していた、
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