〜幕間〜 規律と責任
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の現場を近くで見ていた者はいるか?」
「俺です。こいつが嬉しそうに話して来たんで、ふんじばりました」
聞くと一人の兵が手を上げて、その時の状況を簡単に説明した。
「分かった。じゃあ、お前がこいつを殺せ」
「なっ!」
絶句。俺が放った言葉に誰しもが反応できず、言われた兵は顔をさーっと蒼く染め上げた。
「ま、待ってくれ! ちょっと魔が差しただけなんだ! 何も殺すことなんてないだ、おぐっ!」
縛られたまま必死に反発するそいつの顎を蹴り上げて黙らせる。少し強く蹴ったから意識が朦朧としているようだ。
「何言ってんだお前? 欲に走った時点でお前は義勇軍じゃないんだよ。おいお前、選ばせてやる。賊に堕ちたこいつを殺すか、俺と戦わせて殺すか」
「ど、どうして俺が殺さないといけないんで?」
俺と戦わせて殺すのは、曹操に対してのパフォーマンスだが。
指さして言うと青ざめた顔のまま、兵が尋ねて来た。
「こいつはお前が見つけた賊だ。ならお前が責任を以って処理するべきだ。出来ないってんなら俺が責任を以って処理するが……お前には義勇軍を抜けて貰う」
「……徐晃殿、さすがにそれは厳しすぎだ」
「楽進殿。本気で言ってるのか、それ?」
俺を諌めようと楽進が発言してきたが殺気を籠めて睨みつけて返答する。
「ここでこいつらに対しての対応を誤ったらお前達曹操軍の規律も疑われる。そうなればどうなるか予想くらいしてくれ」
言うと彼女は苦い顔をして口を噤んだのでその後の結末が予測できたのだろうと分かる。
曹操軍は規律の厳しさで有名、例え追随している義勇軍の俺達が破ったと聞いたなら……確実に支援も打ち切られるし、下手をすれば瓦解させられかねない。
義勇軍だからと甘い事を許して貰えるわけがない相手なのだ。部下の不手際に対する責任の所在は隊の責任者である俺、もしくは桃香が示さなければならない。
「さて、どうする? 誰かを救いたいという想いがその程度ならば俺に想いを託して抜けて行け。お前達もだ。別の隊に行きたくなったとか、義勇軍を辞めたくなったなら好きにしろ。俺の隊に中途半端な奴はいらん」
兵全体にどよめきが走る。だがただ一人、地に膝をついて俺に礼をとるモノがいる。
「俺は御大将と想いを繋ぐ為に戦ってんだ。御大将の対応が厳しいはず無い。俺達が戦うべきは賊に堕ちたモノであり、例えかつての味方でもそれは同じ事。どこまでも着いて行きます」
その言葉を皮切りに次々と兵達が頭を下げる。その様子はまるで大きな波が起こったように見えた。
蒼い顔をしていた兵も俺の前に片膝をついていた。
「さあ、選べ」
「俺が殺します。賊に対して容赦はしません」
チャキリ、と腰から剣を抜き放ち、縛られている賊の前に行き、脳が揺れて言葉も発することが出来ないそいつの頸を
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