第四十八話 薔薇園その十四
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「実は丑三つ刻とか逢魔が刻もいいのよ」
「丑三つ刻は夜の三時のことですよね」
聖花はまずはこちらが今で言う何時かを問うた。
「そうですよね」
「そうよ、草木も眠るってね」
そう言われている時間だというのだ、不気味なニュアンスではある。
「それと逢魔が刻はね」
「今ですか」
「丁度夕方から夜になる」
夕暮れの赤が急激に暗くなってきていた、光加減によって普段は青くも見えるアスファルトが夕暮れの赤と混じって紫になっている。
その紫が夜の闇に包まれていき濃紫になってきている世界の中でだ、茉莉也は二人に話すのだ。
「この時間がね」
「その逢魔が刻ですか」
「丁度この世でない存在が出て来る時間なのよ」
「それが今なんですね」
「そうよ」
こう聖花に話す。
「ここがね」
「そうですか」
「そう、それでだけれど」
さらに話す茉莉也だった。
「この時間でもいいのよ、泉を確かめるには」
「この逢魔が刻でも」
「そうですか」
「さあ、行ってみて」
茉莉也は微笑んで言葉で二人の背中を押した。
「今からね」96
「はい、じゃあ今から」
「行ってきますね」
二人も頷く、そしてだった。
早速そのゲートに向かう、その時愛実は自分の手で聖花の手をぐっと握った。そのうえで彼女にこう言うのだった。
「行こうね」
「うん、けれど」
「手握ったこと?」
「どうしたの、急に」
「何となくね」
優しい微笑みを浮かべてだ、愛実は聖花に答えた。
「こうしたくなったから」
「それでなの」
「嫌かな」
おずおずとした感じになって聖花に問うた。
「手握ったら」
「いいわよ」
聖花は微笑んで愛実に答えた。
「というかいつも握ってるじゃない」
「あっ、そういえばそうよね」
「だからね」
今更というのだ。
「そんなこと言わなくていいじゃない」
「ううん、何か今回はね」
「妙に気になったの?」
「そうなの、どうしてかしら」
「そういう時あるけれどね」
時としてだ、それがだというのだ。聖花もここでこう言う。
「私も、愛実ちゃんにね」
「あっ、そうなの」
「そうなの、変に畏まるっていうか」
「ううん、お互いにどうしてかしらね」
「多分ね」
聖花はどうして時としてそうなるのかをだ、愛実に話した。
「お互いに何処かまだ遠慮してるのよ」
「ううん、私が聖花ちゃんに」
「そう、私も愛実ちゃんにね」
そうしたものがあるというのだ、まだ。
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