第一章
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第一章
Two Kids Blues
俺は野良犬だ。この街によくいる野良犬だ。
どうやって生まれたのかさえも覚えちゃいない。親父の顔もお袋の知らない。何か気付いたらボロボロのアパートの中でもうくたばりかけの婆の娼婦のところにいた。婆は病気か何かでいつも酒を飲んでベッドに寝ていた。客ももう殆ど来なくなって後はくたばるだけだった。それでも婆と二人一緒に結構長い間暮らした。俺は散々さぼったり外で悪いことをしながらハイスクールを出る時を迎えた。追い出されると言った方が似合ってるだろうが。その時に婆は俺に言ってきた。
「あんた、何時までここにいるんだい?」
もうボロボロになった顔を俺に向けていつも言っていた。
「あたしはもうこれ以上生きられないっていうのに」
「どうしてって。俺はどうしてここにいるんだよ」
婆に一回聞いた。そもそもどうしてここにいるのかもわからなかった。気付いたらここにいた、本当にそれだけだったからだ。だから俺は婆に尋ねた。
「気付いたらいるんだけれどよ」
「拾ったんだよ」
こう言ってきた。天井を見ながら。その天井にしろ今にも崩れ落ちそうだった。スラムによくあるもうどうしようもない建物の中だ。そこに俺と婆がいた。
「たまたまさ」
「たまたまかよ」
「道の端にあんたが落ちていたんだよ」
婆が言うにはこうだ。
「それで拾ったのさ。それだけなんだよ」
「へえ」
つまり捨て子ってわけだ。親父の顔もお袋の顔も知らないからこれは当然だった。もっともこのスラムじゃそれも全然珍しいことじゃない。
「あんた、もうすぐハイスクールも出るんだろ?」
「まあな」
素っ気無く答えた。婆の横に座って店でくすねてきたスナックをかじりながら答えた。
「じゃあ。ここから出て行ったらいいさ」
「追い出すってわけだな」
「違うさ。あたしがもうすぐ死ぬからね」
天井を見上げたまま俺に言ってきた。
「だからなんだよ」
「死ぬのか」
「死んだらもうここには用はないだろ?」
「俺は宿がなくなるぜ」
「ここよりずっといい場所なんて幾らでもあるさ」
婆は今度はこう俺に言うのだった。
「だから。もう」
「なあ婆」
俺はいつもこう呼んでいた。この時もだった。
「最後までいてやるから安心しろ」
「いいのかい?」
「金位あるさ」
俺はハイスクールに通いながらヤクの売人をやっていた。これが滅茶苦茶金になる。当然モグリだから見つかったらやばい。だが金になるのでやっていた。それで生きていた。
「看取ってやる位はしてやるからよ」
「悪いね、そこまでしてもらって」
「気にするな。最後位静かにくたばれ」
それで今度はこう言ってやった。
「大人しくな」
「そうさせてもらうよ
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