第一章
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。けれどあんた」
「今度は何だ?」
「最後まで有り難うね」
こう俺に言ってきた。
「あたしの側にいてくれてさ」
「たまたまだよ」
俺は顔を背けて婆に言った。本当のことだった。
「気にするなよ」
「そうかい、たまたまかい」
「で、あんたずっとここにいるんだよね」
「手前がくたばるまではな」
また言ってやった。
「安心しな。いてやるからよ」
「そうかい」
「そうさ」
そんなことを言った数日後に婆は死んだ。せめて教会で葬式をしてやった。金を出したらそれなりの葬式ができた。俺からの婆へのせめてもの餞だった。
それが終わってから俺はどうなったかっていうと変わらない。モグリでヤクを売ってそれで儲けてその金で生きていた。遊ぶ金にも困らなかった。スラムなんで車は置けなかったが他には何でもあった。時々かっぱらいやスリもしたがこれは遊びだ。酒に女、遊ぶのには困らなかった。俺はスラムじゃ一番裕福な奴だった。
けれど仲間はいなかった。俺はいつも一人だった。仲間なんていらないと思っていた。婆が死んで俺一人になって。それで気ままに生きていた。これからもそうするつもりだった。
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