覇王との対面
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くる敵を殺し続けた頃、俺たちは槍となり敵の部隊を刺し広げた。
目の前にいた賊を蹴り飛ばすと、前の敵の戦列がさらに乱れ、そこに無理やり突っ込んでいった。
ありったけの力で周りの敵を屠る。力の差を見せつけ、追随する兵達の士気を上げるために。
踊るようにステップを刻み、渾身の膂力を以って薙ぎ払い、吹き飛ばす。身体がギシリと軋んだがこれくらいしないと敵に恐怖は与えられない。
「見ろ、我らにはこのお方がいる、我らの御大将が!」
いつも部隊で俺の後ろに付いて回る一人が大声でそんな事を言い、敵軍を押し広げ、見習うように兵達も空間を開け始めた。しかし御大将はまずいだろ。乗るべきなのか?
「秋斗殿! あまり無茶をしないで下さい!」
進撃を続ける内、愛紗と戦端で合流した。姿を見ると返り血でそこかしこが赤く染まり、どれだけの敵を切り裂いてきたのか予想も出来ない。お前もずいぶんやったじゃないか。
「そういう愛紗はどうなんだ?」
「まだまだ余裕です」
「なら、もうちょっと無茶……しようか!」
言うや二人で目の前の敵部隊を切り拓き血の半円を作る。いわば結界。黄巾の雑兵など入っただけで斬り捨てられる。
「私たちを起点に左右へ押し広げろ! 少しでも兵同士の負担を減らせ!」
さすがは軍神、本物だ。俺に合わせてくれるから楽だし、それに効率が何倍にもなる。
「俺たちが付いてる! まだまだいけるな!?」
「「「応!」」」
さて、しばらくは余裕だが、被害をどこまで抑え込めるか。時機は任せるぞ、雛里、朱里。
†
「しゅ、しゅごいでしゅ」
鈴々ちゃんと後陣に構えていた私は、戦場の先端で行われていることに目を見張る。
あの二人が組むとここまですごいのか。
敵は躍起になって二人の方へ向かうので広がりきらない。前線は愛紗さんと秋斗さんが鍛えた義勇兵だ。気をとられた敵を見逃すはずがない。
数で勝っている敵は焦って余計判断を失い、引くという思考が頭から抜け始めるだろう。
これは思ったよりも早くいけるかもしれない。それにしても……
「あぁ、やっぱり愛紗達は綺麗に戦うのだなー」
鈴々ちゃんの言葉は正しい。そうなのだ。あれは舞っているよう。敵はその美しさに魅了され吸い寄せられているのかと錯覚する。
「このままだと押し切れそう――」
その時、待ちに待った報告が入る。
「敵後陣、拠点から出て参りました!」
「あわわ、あまりに早い……」
秋斗さんと愛紗さんは相性がいいようで、二人が組んだなら敵にとっては恐怖そのものだろう。
「雛里ちゃん、もういける……かな?」
桃香様が言いたいのは後退の合図。でも……まだだ。
「まだです。伝令、敵後陣が二人の隊とぶつかった瞬間、一押しして反転、牽制しながら後陣の補佐」
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