長い乱世の入り口に
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こそ、彼女は軽く言葉を掛けてくれたのだから。
だがこちらも言っておかなければならない事がある。
「星、お前もだぞ。私にばかり構ってないで自分の事もやれよ?」
「なんのことやら」
真剣に言ってみても、相変わらず軽く誤魔化そうとする。私と秋斗にそれは効かないのがわかってるくせに。
「桃香はいいやつだ。志も高い。お前には烏丸との戦いは出てもらうしかないが、それが終わったら自分の望むようにしたらいい」
逃げられる前に構わず続ける。
わかっているさ。こいつは桃香のような子と共にいたほうがいい。私の器も測り終えただろう?
「あなたは本当に……お優しいことだ」
「ふふ、お前もな」
また誤魔化した。いい友に恵まれたな、私は。この地で太守をしていてよかった。
「そうそう、秋斗もいることだしな」
にやりと笑い私が先程の仕返しとばかりにそう言うと、思わぬ言葉に吹き出す星。ばれてないと思っていたのか? バカめ。
「冗談が過ぎますな白蓮殿、私は――」
「はいはい」
「はいはいではないでしょう!? あなたは誤解をしている!」
いつもの冷静さはどこへやら必死に弁明しようとする星をからかいながら、こいつでも焦ることがあるんだなと思いながら私は仕事に戻った。
もう私には心で繋がった友がいて、認め合う大切な腹心と、支えてくれる部下達がいる。大丈夫、きっと離れてもうまくいくさ。
†
桃香、朱里、雛里は会議、星と白蓮もだ。
今は八つ時、俺と鈴々は団子屋の前にいる。警邏の間の少しの休憩というやつだ。
愛紗? 今頃俺たちを探しているかもしれないな。急に警邏に出たから。
流れる時間は心地いいモノだったが、もうすぐ起こるであろう事柄が頭を掠め、急に寂寥感が込み上げてきた。
なんとなしに、隣でおいしそうに団子を貪っている鈴々に話しかけてみた。
「なぁ鈴々」
「どうしたのだ?」
「俺たちは多分次の大きい戦いが終わったら白蓮の所を離れると思う」
「そうなのか」
短く、あっさりとした返答も、まさしく彼女らしいと思いつつ続ける。
「寂しくないか?」
「そりゃあ寂しいのだ」
「そっか」
誰だって見慣れた街や仲のいい者と離れるのは寂しい事だ。
雛里が水鏡塾から旅立つ時の気持ちが少し分かった気がした。
「お兄ちゃんは?」
「寂しいなぁ」
「そっか」
「でも進むしかない」
「うん! それにきっと他の所では新しい出会いもあるのだ!」
そんな鈴々のポジティブさを羨ましく思ったが、自分も見習わなければと考えて落ち込んでいた思考を振り払う。
「そうだな! 鈴々は時々いいことを言うなぁ!」
「時々……むぅ、お兄ちゃんは失礼だなー!」
「はは、すまんな!」
「もういいのだ! とりあえずお兄ちゃんは元
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