長い乱世の入り口に
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「お前達には世話になった。これだけ準備万端に烏丸と戦えるのは桃香達のおかげだ。ありがとう」
「え?まだ来るって決まったわけじゃ……」
「いや、必ず来るよ。あいつらのことは私が一番知っているから。他の太守や部下達は気付いてないが来る予兆のようなものがあるんだ」
「そうなんだ。うーん、どういたしまして?」
どう答えていいか分からず、とりあえずお礼に対して返しておくと目を丸くしてから白蓮ちゃんは苦笑した。
「ふふ、桃香のそういうボケた所好きだぞ」
「ななな、なに言ってるの白蓮ちゃん!」
「気にするな。桃香、今から真剣な話をするからよく聞け」
好意を伝えられ、恥ずかしくて慌てていると、他にも大事な話があるようだ。ゴクリと喉を一つ鳴らして思わず身構えたが、私は彼女が続けるのを待った。
「今日の会議で分かったと思うが、お前たちをいつまでもここに縛り付けているわけにはいかない。部下達も多分、お前たちへの嫉妬から騒いでいたしな。だから黄巾討伐で名をあげろ。そして、自分の家を作るんだ桃香。理想を叶えるんだろう?」
そう厳しい口調だけど優しく諭してくれる。
同時に、言われたことによって漸く気付く。
私は甘えていただけだ。手伝っているとは言っても拠点を貸してもらい、ある程度の世話までしてもらっている。
これまで部下の人たちからの苦言もあったかもしれない、いや確実にあったはず。
私たちのように自由に行動できる義勇軍など、きっといないだろう。
ずっと守ってくれていたんだ、と思うと途端に申し訳ない気持ちになる。
「白蓮ちゃん。私、友達だからって甘えすぎてた。ごめん」
「いいよ。私が望んだことだ。義勇軍の働きは私達にとっては大きなモノだったから気にしないでくれ。そして……友だからこそ今、背中を押させてくれ。私もここからさらに名をあげる。どちらがより有名で大きくなるか、競争だぞ桃香」
「うん。負けないよ!」
笑いあって握手をし、白蓮ちゃんと別れた私は、この決意と出来事を大切な仲間達に話すために皆の所へ向かった。
桃香が自室に帰ってすぐ、物陰から一人の女が現れた。彼女なりに気を遣い、時機を見計らっていたのだろうが盗み聞きとは頂けない。
ただ、普段の彼女のように意味深に、いや、面白半分な様子では無く、こちらを見定めるかのように鋭い眼差しを携えていた。
「白蓮殿もなかなかやりますな」
「なかなかとはなんだ、なかなかとは」
酷い言い草だ、と伝えるように一つ肩を竦めてみるが、星はくっくっと喉を鳴らして苦笑し、いつもの調子に戻る。
「褒めておるのです。そうふて腐れなさるな」
「はぁ、お前のは褒められてる気がしないんだよ」
「それは残念」
星なりの気遣いなのは分かっている。私が落ち込んでいるのではないかと思って
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