第三章
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ないのかよ」
「認めるのはそっちじゃない」
「ああ、わかったよ」
俺はもう切れていた。完全に頭に血が昇っていた。
「もういい。じゃあな」
「勝手にしたら」
俺達は殆ど同時に電話を切った。後には激昂する俺がいた。向こうも同じだった筈だ。
「糞ったれ」
俺はスラングを吐いた。そして壁を思いきり蹴飛ばしてからその場を後にした。
それから俺達はさらに疎遠になった。何か顔を見合わせるのも気まずくなっていた。
そのまま時間が過ぎた。気付けば妙な噂が流れていた。
「ねえ」
「何だよ」
ある日同じ学部の娘が俺に声をかけてきた。
「ナタリーと別れたんだって?」
「!?」
最初その言葉に目を丸くさせた。
「何だって!?」
「だから別れたんでしょ」
彼女はまた俺に尋ねてきた。
「大喧嘩して」
「喧嘩!?」
電話でのことだろうかと思った。何でそんなことが噂になってるのか俺には想像がつかなかった。
「それで別れたって聞いたわよ」
「誰から聞いたよ、それ」
「ええと」
彼女はそれを言われて目を上に向けて考える顔を見せてきた。
「誰だったかしら」
「自分でわからないのかよ」
「噂だからね」
彼女は答えてきた。
「誰から聞いたかは覚えてないけれど。本当?」
「いや、それは」
俺は説明しようとした。だがその時だった。
ナタリーが目に入った。彼女は俺の方をじっと見ていた。だが俺が見ていることに気付くとその場から駆け去った。もうそれで終わりだった。
何も言えなかった。何をしても駄目だった。俺達の中はそれで終わってしまった。あれこれ言っても溝は深く成るばかりでどうしようもなかった。そして今この駅にいるわけだ。
「大学は?」
「もう編入手続きを済ませてあるよ」
「そう」
俺達は夜の駅にいた。ホームにいるのは二人だけ。他には誰もいなかった。
「この街を出るのね」
「ああ」
俺は答えた。
「もう二度と戻らないかもな」
「そう・・・・・・」
「そうだよ」
俺はまた答えた。
「親父とお袋には適当な理由をつけているけれどね」
「そうだったの」
ナタリーは俺のその言葉を聞いて俯いた。
「じゃあ知ってるのは私だけね」
「そうなるね」
「私達だけなのね」
「最後の秘密だよ」
俺も俯いて言った。遠くから聴こえる車の音がやけに寂しかった。
「二人だけのね」
「ねえ」
ナタリーは俺に声をかけてくれた。
「最後だけれど」
「うん」
「今度ね、会ったら」
「どうするんだい?」
「・・・・・・いえ」
だがナタリーはそれを言うことができなかった。顔を背けてしまった。
「御免なさい。何でもないわ」
「・・・・・・そう」
「ただ」
それでもこの言葉は俺にかけ
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