第一物語・後半-日来独立編-
第五十九章 解放《4》
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このように異性として見詰められることも初めてだ。
どうにかなってしまいそうで、このままでは危ないとも感じる。
なのにセーランは追い討ちを掛けるように、
「俺は委伊達・奏鳴、お前を一人の女性として好きになった。一目惚れの形だけどさ、離れている間お前のことが気になって仕方無かった」
「……う、うむ」
隠り気味の声を発する。
「解ってたんだ。どうせ俺なんて駄目な奴だって。でも奏鳴と一緒にいたい気持ちがあってさ」
「お前は駄目な奴なのではない」
分かる。それだけは。
この胸の鼓動の意味は分からなくとも、彼が駄目な人ではないことは分かる。
「私を助けにここまで来た。そんな奴の何処が駄目だと言うんだ。駄目なのは私の方だ。皆が救おうと必死になってくれたのに、それに甘えられなかった。私に比べたら決してお前は駄目や奴ではない!」
声を張って言った。
何故そこまで声を出したのは疑問だったが、出さなければならないような気がした。
「奏鳴の手は柔らかくて気持ちい」
「ばっ――」
本当に分からない奴だ。
今言うことではないだろう、と心のなかで思った。
何を考えているんだと、ちょっぴり怒りが込み上げる。
「手、握ったの久し振りなんだ」
そういえば、自分もそうだったと記憶を思い返した。
最後は父親と手を繋いだ筈だ。
「なんか照れる」
「お前が照れてどうするんだ」
「なんだよ。お前だって、角、生えてるぞ」
「んな!?」
何時の間に、と奏鳴は握られていない左手でこめかみ近くを触る。
すると確かに角が生えていた。
「興奮してるんだ。卑猥な奴だなあ」
「ちが、これは違うんだ。ただ驚いたから出ただけであって」
「ははは、分かってる。前はお堅い感じだったからな、そんなに可愛く反応してくれるんだな」
「お前のような奴は産まれて初めてだ。一緒にいると調子を崩される」
「褒め言葉として受け取るわ」
セーランは笑った。
解放されていることなどお構い無しに、ただ奏鳴と一緒にいられることに幸せを感じていた。だからこんな時間がこれからも、もっと、ずっと、あればいいなと思っていた。
自分のためだけでなく、彼女のためにもなるように。
繋いだ手をセーランは離し、抵抗するように奏鳴の手先が微かにセーランの掌を掻いた。
そして数歩、距離を離してセーランは言った。
「もっと、ずっと、これからも。もっと、ずっと、一緒にいたい。無理なら無理で構わねえ。はっきりと答えてくれ」
前置きを入れ、本題へと入る。
「好きになれたのが奏鳴でよかった。だって可愛いから、奏鳴は。短い時間だけど日来に来て、久し振りに会った奏鳴が変わってて。救いに行かなかったことを後悔した。
だけどこうして、今ここにいる。目の前に奏鳴がいる。で
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