四幕 〈妖精〉
1幕
[1/2]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
アハルテケ号の一件から1旬(1週間)ほど経ったある日、ヴェルを通してクランスピア社から指令があった。
リーゼ・マクシアのイラート海停にいるエージェントから、データディスクを回収して社に持ち帰れ、というものだ。
実質、イバルと同じく雑用係に等しいルドガーに拒否権はなかった。
いつのまにか同伴するのが自然になったジュードたちと共に、ルドガーはリーゼ・マクシアに向かった。
輪の中にはアハルテケ号の件以来、ルドガー宅を訪ねるようになったフェイもいる。
「船に乗るの、初めてか?」
「うん……すぐ下が海、少し、コワイ。落ちちゃいそう」
ワイシャツに指先でしがみつくフェイは、まるで子供で、ルドガーは微笑ましかった。
イラート海停に着いた一行は、宿を訪ねた。
大人数だとかさばるので、ルドガー、ジュード、エル、フェイだけで、ある一室をノックした。
出てきたのは、手や頭に包帯を巻いたレディエージェント。
「何の用?」
「ヴェル…秘書官に頼まれて、データを回収に来た」
ちらと見えた部屋の奥では、ベッドでもっと重傷らしいエージェントが横たわっている。ここでお節介を発揮するのがジュードなわけで。
「診せてください。僕、医学者なんです」
「結構よ。――そんな話、本社からは聞いてないわ」
そう頑是なくされるとルドガーもむっとする。
ルドガーはGHSを出してヴェルに電話し、レディエージェントにGHSを渡した。レディエージェントはヴェルと2、3話し、ようやく納得したらしかった。
「失礼しました。これがデータです」
GHSを返され、CDを差し出される。ルドガーはそれらを受け取った。
すると、横からじーっと見ていたフェイが、おもむろにCDに指先で触れた。
「ブンシセカイ……ミチシルベの、解析データ。シツチョーが持ってた」
レディエージェントが、サングラスをかけていても分かるくらいに顔色を変えた。何故それを、とでも言いたそうな雰囲気だ。
「確かに。必ず本社に届けます」
ルドガーは内心慌てて言い添えた。
レディエージェントは困惑を残しつつも頭を下げた。
ロビーに戻ると、皆が銘々、座ったり、立って話したりしていた。
「お、ルドガー。どうだった?」
ルドガーは胸ポケットからCDを出して見せた。女子組は興味津々にCDを見つめた。エレンピオスではポピュラーなデータ記録媒体だが、リーゼ・マクシア人にはまだ珍しいらしい。
「何だっけ。ブンシセカイとミチシルベの解析データだってフェイが……フェイ?」
「――――っあ、ご、ごめんなさい、パパっ」
フェイの「パパ」呼びの癖は治っていない。最近はルドガ
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ