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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百一話 不可知
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いほど士気が低下している……」
「……」
「そこを理解しないと帝国の動きは読めません。ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯が何を考え、どう動くかもです」
「なるほど」
なるほど、と思った。中将が我々の問いに不満そうな様子を見せるわけだ。ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯の真意も理解せずに状況を分析し未来を推測しようとしている。事前に馬鹿な質問をするなと言われたが確かに俺達は馬鹿な質問をしていたのだろう、胸に苦いものが満ちた……。
「今度はこちらの問いに答えて下さい。帝国では何か変わった動きは有りませんか?」
「クロプシュトック侯の反乱鎮圧に向かっていた貴族達が戻ってきました。地球討伐に向かっていたミューゼル提督も同時期に戻ってきています」
ホワイト中尉が答えるとヴァレンシュタイン中将が頷いて“他には?”と問い掛けた。ホワイト中尉が首を横に振る、フェザーンで騒動が起きてからフェザーン経由で情報を得ることが難しくなっているのだ。不満そうな表情を見せるかと思ったが中将は表情を変えることなくフェザーンの情報を要求した。
「御存知かと思いますがニコラス・ボルテックが自治領主になっています」
「他には?」
「帝国の高等弁務官が今月末にはフェザーンに到着します。マリーンドルフ伯爵です」
ホワイト中尉の言葉に中将の表情が厳しくなった。ホワイト中尉、バグダッシュがそれを見て緊張している。
「レムシャイド伯からはお聞きになっていないのですか?」
俺が問い掛けると中将が頷いた。
「聞いていません。マリーンドルフ伯は温厚な常識人です、機略の人ではない。フェザーンの高等弁務官といっても形だけ、おそらく報せる必要は無いと思ったのでしょう……」
機略の人ではない、しかし中将の表情は厳しいままだ。
「マリーンドルフ伯に何か有るのですか?」
「彼には娘がいます」
「娘?」
問い返すと中将が頷いた。
「ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ、彼女が同行しているなら話は違う。政略家としては帝国でも屈指の才能の持ち主です」
中将の言葉に皆が息を呑んだ。彼の人物評価が誤ったことは無い。
「では真の高等弁務官は彼女ですか?」
声が掠れた、俺の問いに中将が首を横に振った。
「いや、帝国では女性の地位は低い。彼女の才能を見抜いての事ではないでしょう。フェザーンに送れる信頼できる人間がマリーンドルフ伯以外に居なかった、そういう事なのでしょうが……」
では偶然か……。
「マリーンドルフ伯の周辺を探ってください。同行者が誰か、知っておきたい」
「分かりました、早急に調査します。ところで、その伯爵令嬢は今何歳なのです?」
中将が小首を傾げた。
「私よりは三歳下のはずだから十八歳かな」
十八歳? 中将の言葉に皆が顔を見合わせ
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