ワールドウォー=スリーの報道ミス
[3/3]
[9]前 最初
いがまだ残っていて頭が痛い。それで動くのを止めた。そのままソファーの上でパズルを解くことにした。だがやはり解けない。彼は終いには雑誌を放り投げた。
「ああ、もういい」
「にゃっ」
雑誌は猫のすぐ側に落ちた。猫はそれで眠りから覚めて起き上がった。
「あ、悪い」
「くうぅ」
猫は彼を見て咎めるような目をした。しかしそれは一瞬ですぐに別の場所に行った。そしてまた寝転がりだした。
「ニュースです」
ここでまたニュースが入る。だが彼はそれを聞いてはいない。酔いが醒めずまだ憮然とした顔をしていた。そしてただ前を見ていた。
「これからどうするか」
「大変申し訳ありませんでした」
「マスコミが謝るのか。そりゃ雨も降るな」
彼はニュースをちらりと聞いてそう呟いた。だがそれで聞くのを止めてしまった。まだぼうっとしたまま前を見ることを再開した。暫くそのままでいようと思った。
「先程のニュースですが」
アナウンサーの言葉が続く。それを聞き流しながら後ろに身体をもたれかせさせる。それでも気分は晴れたりはしない。むしろ一層不機嫌になっていくのを感じていた。
ニュースは続く。さっき出ていた女のアナウンサーがまた出ていた。横目に見てあの髭の男でないだけましかな、と思ったりもしていた。それでも聞いてはいない。
「誤報でした。繰り返します」
「誤報?そんなのいつものことだろうが」
そこだけ聞いてそう言った。とにかくマスコミは信用ならないと思っていた。とりわけ球団を持っている会社は嫌いであった。新聞はなるべくその球団が出ないものを選んでいる程であった。それは子供の頃からであった。黒い帽子も白いユニフォームも大嫌いであった。そのチームが負けるのが何よりも楽しみであった。
「マスコミなんて何処も同じだがな。どうせ謝っても同じことの繰り返しだろうが」
それはもう愚痴であった。酔いが醒めずついついそういう言葉が出てしまう。だがそれが何にもならないのは彼自身が最もよくわかっていることであった。
「第三次世界大戦ですが」
「さて・・・・・・と」
彼はゆっくりと立ち上がった。そして浴室に向かった。
「酔いを完全に醒ますか」
「誤報でした。戦争は回避されました」
「それからあいつにまた電話でもかけるとしよう」
やはり聞いてはいない。そのまま浴室に消えていった。
「戦争は回避されました。戦争は・・・・・・」
しかしそこには誰もいなかった。ただ浴室から水を流す音が聞こえるだけであった。よくある休日の一風景であった。少なくとも彼にとってはそうであった。
ワールドウォー=スリーの報道ミス 完
2005・3・3
[9]前 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ