過去編
挿話集
聖燗幻夜A
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スイッチしても大してダメージを貰ってない俺は回復もそこそこにボスやいつもとは違う部屋の様子を観察していた。
物理耐性、魔法耐性共に標準的でHPが少し高めに設定されているのか、その減少スピードはゆったりとしている。戦闘開始から40分程経ち、4段バーも残り2本となった。
……まあ、その約半分を俺達が削ったのだが。
「ふむ……?」
淡く光る聖像画。どう考えてもあの異常なまでのボスの強さと何か関係ががありそうだ。
だとすればそれは、MPの自動回復……もしくは防御力ないしは被ダメージのバフ。
そして何らかの効果を発揮しているオブジェクトならば…………
「ユイ、あの絵だが」
「はい?」
「破壊は可能か?」
「え……?ちょっと待って下さいね…………可能です。少し頑丈なようですが」
「なるほど……」
いつしか周りの仲間達も上を見上げ、ボスとその絵の間で視線を往還させていた。
「跳躍じゃ届かなそうだぜ……どうする?」
サポートスキルの《投擲》《投剣》ではあの絵に大したダメージは与えられない。
唯一ダンジョン内で飛行が出来るのスキルを持つキリトだが、時間は短いしクールタイムを10分有するという燃費の悪さ。いかに火力馬鹿のヤツでも精々1枚が限度だろう。
聖像画は円形の部屋の八方にあり、それなりに間隔がある。燃費の悪さという共通項でメイジの魔法も似たようなものなので使えない。
「……仕方ないな」
「お、何か思い付いたのか?」
あまりスマートな方法では無いが、ぎりぎり行けそうな気がしないでもない。
「飛ぶか」
「いや、ダンジョンじゃ翔べないだろうが」
「いや、『飛』ぶのはお前だ、エギル」
「…………は?」
「斧、しっかり握ってろ」
一堂がポカンとする中、俺はエギルを気を付けの姿勢で立たせると、背面に回る。
胸部プレートアーマーと胴丸の継ぎ目に右手をヘルムとの継ぎ目に左手を入れ、下半身の重心を落としながらエギルごと体を回転させる。
「ふんっ……!!」
遠心力に手首の微妙な角度で調節を加え、エギルに回転力を移す。
そのまま最も近い聖像画に向かって放り投げた。
「のぉぉぉぉっ!?」
あまりに一瞬の出来事だったためにエギルが悲鳴を上げたのは距離も半ばを過ぎた辺りだった。自分より二回りはデカイ巨漢を投げ飛ばすのは相当難儀だったが、その分威力はピカ一。
―ザシュザシュザシュ!!
気持ちのいいスラッシュエフェクトを三回鳴らすと、重力によりエギルが落下してきた。うつ伏せに潰れているエギルをつつきながら言う。
「よし、次。ほら立てエギ―――」
「よし次じゃねぇ!?」
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