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乱世の確率事象改変
牡丹の花は白を望む
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らず見返し続ける。
 しかしそれでは小ばかにしているようにも見えるのですが。
「うぅ……星ぃ〜。こいつをなんとかしてくださいよ〜」
 何故何も言わないのか、多分彼は牡丹がある言葉を言うのを待っているのだ。
 勘違いで貶めてしまったのだから言わなければならない。しかし彼にも随分と子供っぽい所があるようだ。
「牡丹よ、お前からまず言うべき言葉があるだろう?」
 促してやると悔しそうに顔を歪めて、俯いてしまった。
「……なさい」
 小さく、この場の誰にも聞こえないような声で言葉を机に放ったが、少しいじわるをしたくなって、
「聴こえんな」
 彼女を追い詰めた。
 するとバッと顔を上げ、その表情は泣き怒りに変わっていた。
「勘違いして悪かったです! ごめんなさい!」
 全く心の籠っていない謝罪を口にして、彼をまた睨みつけはじめた。
 よしよしというように頷いた秋斗殿はすっと頭を下げる。
「俺こそごめんな」
 短く言ったのは多くの意味を込めるためだろう。何にと明確に言わない所が彼らしい。
 そんな二人を見て耐えきれず吹き出してしまった。
「クク、お互い子供ではないか! 街の子供でも素直に謝るというのに、どちらが先かで意地を張り合うなど……あははは!」
「でもですね星、このバカは私を見下すような目で見て来たんですよ!?」
「お前が先に睨んだんだろうが!」
「はぁ!?」
「クク、まあまあ、互いに謝ったのですからまたさらに意地を張り合う事も無いでしょう」
 そう言うと二人ともが落ち着いたようで、まだ合わせる目は厳しいモノだったが食事を始める。
「そうだ、お前に真名を預けておく。これからは秋斗って呼んでいいよ」
 彼は白蓮殿に認めて貰った牡丹のことを自分も認めていると言いたいらしい。
「……私は牡丹です。そう呼ぶことを許してやります」
 対して牡丹は少し躊躇ったが真名を呼ぶことを許したあたり、自身も秋斗殿の事を認めたらしい。
 らしいのだが……

 そのまま食事を続け、他愛ない話を繰り返していたが、二人とも許したというのにいくら経っても真名で呼び合う事はなかった。


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