雛は未だ気付かず
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雛里に声がかかる。
「軍師様ご武運を。またのご来店をおまちしております。」
どういうことか分からんが店長、今度覚えておけよ?
†
不思議な状況になっていた。秋斗さんと手を繋いで街を歩いている。もの凄く恥ずかしい……けど同時に暖かい気持ちも心を満たす。
きっとお店を出てから離すのを忘れてるんだろう。
このままがいいなぁ、なんてことを考えていると、
「散々だ。結局星にお菓子買えなかったし。すまないな雛里、恥ずかしかっただろう?」
怒り心頭といった様子で文句を言っていたが私に申し訳なさそうに謝ってきた。
「いえ。それに手を繋いでると安心します」
「あっ……嫌じゃないのか?」
はっと気づいて手を放そうとしたが掌に力を少しこめ、きゅっと握りしめてそれを遮った。ちょっと照れてるようで可愛いく思える。
「ふふっ、嫌じゃないです。嬉しいですよ」
可笑しくて笑いが漏れて、そこであることに気づく。
私、普通に話せてる。
「そうか。うーん、じゃあこのまま街歩くか?」
「はい!」
「じゃあ本屋でも行くか」
ただの会話がすごく楽しい。気分が高揚しているのか自然と脚が軽くなった。
「いいですね。いろんな本みたいでしゅ」
うあ、噛んじゃった。
でも俯かずに……秋斗さんと顔を見合わせて笑いあう。
少し成長できた気がします。
鼓動は速いけど。
まだ少し恥ずかしいけど。
もっとこの時間が続きますように。
そう願いながら私はその日を目一杯に楽しんだ。
蛇足〜店長日記〜
子龍様から聞いた通り、支店である甘味処『娘仲』に徐晃様がやってきた。
何故子龍様ではなく軍師様を連れているのかは疑問ではありました。
正直、子龍様と来るとばかり思っていたので内心焦りましたが、そこは冷静にこの変装道具を付け対応しました。
徐晃様は私だと気付いていらっしゃらない。
なるほど。
軍師様はまだご自分のお気持ちにも気付いていらっしゃらない。
なら私がひと肌ぬぎましょう。
おぉ、会心の出来の料理を食べてそのように幸せそうな顔をしていただけるとは。
これは余計に手を貸さなければ。
徐晃様は鈍い。変態のくせに鈍い。
ならこういうのはどうです?
次いらした時は口づけですからね。
軍師様頑張ってください。
私としては子龍様にも頑張ってもらいたいのですが。
おっと最後に結果を。
『ほっとけぇきは初恋の味』
これでよし。
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