雛は未だ気付かず
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出す。手が汚れちゃいかんし蜜が服に着いたら申し訳ないから食べさせてやろう。
「えっ、あわわ……あ、あーん」
おう、最初困ってたが食べてくれた。まさに親鳥の気分とはこういうモノか。
「ふわぁ……」
咀嚼することなく口に入れた途端にぱぁっと表情がとろける。マナーは悪いが仕方ないことだろう。
しかしやっぱり好みだったか。おいしいもんなホットケーキ。さすがは女の子、それに雛里も朱里もお菓子作りは得意らしいから店長に材料でも借りて一緒に作ってみたいな。
「気に入ったみたいだな。杏仁豆腐と交換するか?」
「っ! いいんでしゅか!?」
「お、おう」
噛みながらのあまりの勢いに圧されるがこぼさないように慌てず交換する。まあ喜んでくれるならいいか。
目の前にやってきた杏仁豆腐を蓮華で一つ掬い上げて口に運ぶ。
ん、うまい。杏仁豆腐もいいな。
「あ、あわわぁ〜!!」
何故かホットケーキをもぐもぐしながら俺の挙動をじっと見てた雛里が突然騒ぎ出した。
「どうした!?」
急いで呑み込んで雛里に聞くとわたわたと真っ赤な顔で手を振り、
「く、か、かんせ、かんせちゅ」
ええいまどろっこしい! 何を伝えたいんだ! かんせ――
そこで一つの行動に思い至る。
やっちまった。こっちの世界だったらなんていうのか気になるなぁーあはは。
「ごめん。……うっかり」
「べ、べべべつにいいでしゅ」
そういや食べさせた時点で間接キスしてたな、と気付いた。どうしようやばい、俺も恥ずかしい。
「……」
「……」
そのまま無言になり、お互いに食事を続けるも変な空気が晴れることは無い。
顔を合わせるのも、見るのも怖くなって俯いたまま食べきった。だが非常に気まずい。
「徐晃様」
時を見計らったかのように店員さんが話しかけてくる。しかしなんで俺の名を知ってるんだ。
「何かな?」
「店長よりお代金はいりませんので後日感想と改良案を頼みます、とのことです」
店長ここにいるの? それともマークされてるのか?
「あ、もう一つ。恋仲割引ということにしますので女性といらした場合手を繋いで店を出てほしい。とのことです」
……俺捕まった。多分店出た瞬間通報されるわ。店員さんにやにやするな。ダンディな髭のくせに。あ、こいつ付け髭つけた店長じゃねぇか!
「あわわわわ……」
もはや震えまくってる雛里は目をぐるぐると回して思考が追いつかない様子。
しかし可愛すぎる。店長、狙ってやったんならあんたを軍師として迎え入れたい。
「行こう雛里。ごちそうさまでしたちくしょうめ!」
「あわわ……あの、おいしかったです! ごちそうさまでした」
二人でお礼を、俺の場合は少しの怒りを込めて言ってから立ち上った雛里の手を握り出口に向かう。すると後ろから
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