第二章 非平凡な非日常
番外5、出会いと別れ、儚きもの
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
夢を見た。
それはとても遠く儚い夢。
それはとても一瞬で短い出来事。
それは、
まだ『私』だったときのお話。
†‡†‡†‡†‡†‡
「おい死神! こっちくんなよ!」
「あっちに行け!」
その日も、いつものように虐められていた。
エメラルドグリーンの髪に緑の瞳。
それが虐められる原因だった。
けれど、それだけじゃなかった。
親が殺されてしまっている。
だからこそ“死神”と呼ばれていた。
そんな時は決まって心を閉ざす。
そうすれば他人の声は聞こえない。
そうすれば自分の感情は見えない。
「ねぇ、何してるの?」
けれど、この日だけは違った。
突然声をかけられて思わず顔を上げる。
そこにいたのは、自分と同じくらいの歳の少女だった。
プラチナブロンド色のセミロングの髪はポニーテールで束ねられ、赤い がこちらを見つめている。
「あうっ……その……」
しどろもどろになる言葉。
情けなさから後さずりたくなるが、既にここが部屋の隅。
逃げ場なんてなかった。
「あの……えっと……」
「わたし、たかしろさいか。よろしくね」
「し、しもつき……かなめ……」
名乗られたら名乗りなさい。
今は亡き母の言葉を思いだし、反射的に名前を口にした。
しかし本 音を言ってしまうと、目の前の彼女が怖かった。
この孤児院に入って以来、普通に接してくれる人はいない。
最初から突き放す人もいれば、最初は仲良くするくせに突然突き放す人もいる。
結局は捨てられるのだ。
「ねぇ、何でこんなところに一人でいるの? 寂しくないの?」
「高城さん、放っておきなよ」
追求する彼女を、その場にいた少し大人びている少女がたしなめた。
すると彼女は首を傾げて言った。
「どうして?」
「そいつ、“死神”だから」
「どうして?」
「そいつの親、殺されてるのよ。それにその髪と瞳の色。絶対人間じゃないわ」
「どうして?」
なんの意図があってか、すべての質問に「どうして?」で返していく、さいかと名乗る少女。
そんなやり取りが10を越えた辺りで、向こうが終にキレた。
「うるっさいわね! あんたもハブカレタイの!? その方がいいかもね。あんたのその髪も瞳も! 人間じゃないもの!!」
そう叫ぶと、近くにあった木箱を投げつけ、彼女は部屋を立ち去った。
取り巻きたちも、それに続くようにして部屋から出ていった。
「だい……じょうぶ?」
恐る恐る声をかける。
背中を向けられていても、見えてしまったのだ。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ