第二章 非平凡な非日常
番外5、出会いと別れ、儚きもの
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
産を迎えてしまったの。その時に生まれたのが私。そして、私の産声を聞いたとき、お母さんは優しく微笑みながら、静かに逝った。残されてしまったお父さんは、もちろん深い 悲しみに沈んでしまった。だって世界中の誰よりも、世界中の何よりもお母さんを愛していたんだもんね。死の出産から一週間後、遺体となったお父さんが発見された。“せーさんかり”って言う猛毒を飲んでの自殺だったらしいよ。近くには一枚の紙が落ちていて、こう書かれていたんだって。 《今、会いに行きます》って」
しばらくの沈黙。
何て声をかけていいのかがわからなかった。
自分が自分の不幸を嘆いているのが馬鹿らしく思えてしまうほどに、壮絶で悲しい過去。
「私は、捨てられたの」
ポツリと言われたその言葉が、私の心に深く突き刺さった。
私の両親は殺された。
私をたった一人残して。
それでも私は二人の顔を知っているし、思い出がたくさんある。
対して彩加の両親は、死んでしまった。
赤子の彩加を残し、方や病死、方や自殺と言う形で。
彩加は二人の顔を知らないし、思い出だって何もない。
彩加は、親の愛を知らない。
私と彼女の差は、そこだった。
「でもね、何もないからこそ、悲しむことができないの。こうして他人事でしか語れないの。要みたいに、辛いと思えないの」
「私は、それが辛いよ。何もないから悲しめないなんて、そんなの悲しすぎるよ」
「だけど」
「だから、私がいてあげる。 もう彩加は一人じゃないよ? もう、彩加を一人にしたりしないよ? だから一緒に、思いで作ろう?」
「要……。うん、ありがとう!」
†‡†‡†‡†‡†‡
彩加と出会ってから数ヵ月が経った。
七夕。
今日は特別に、外出が許可されていた。
だから私は彩加と二人、お出掛けをしていた。
「アクセサリー屋さん?」
「うん。一度お母さんに連れていってもらったの」
私たちが向かったのは、裏路地にある小さなアクセサリーショップ。
小道が好きなお母さんが偶然見つけたお店。
古風な扉を開けると、静かにカウベルが鳴った。
「いらっしゃい、お嬢ちゃん」
燕尾服にシルクハットの初老の男性が出迎えてくれた。
初見の人からしたら、軽く不審者認定ができそうだ。
案の定引いている彩加の手を引いて、店の中に入った。
しばらくそれぞれ見て回る。
「かーなめっ。これあげる」
支払いを終えたとき、彩加が飛び付いてきた。
その手には茶色の小さな袋が握られていた。
そう言えば彩加は私より先になんか買ってたっけね。
袋を受け取って、中身を取り
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ