第四十四話 少年期【27】
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てあげて下さい。 むしろ戦闘パートに原稿用紙2枚使うぐらいなら、もう少しぞうさんを出してあげて」
先生として、どんな子とも向き合って、受け止める心を持たなくてはならない。自身の掲げている目標を頭に思い浮かべながら、彼女は机に一時だけ突っ伏したのであった。
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数刻後。なんとか根性で立ち直った彼女は、残りの5枚の作文用紙を手に持った。テスタロッサ兄妹に劣らない、むしろ同等なぐらい尖ってしまった子どもたちの作文であった。
アルヴィンがいつも少年Aと呼んでいるアレックスの作文。明るい茶色の髪と瞳のメガネをかけた、おっとりした少年である。ちなみにメガネデビューした当日に、唯一先生から褒め言葉をいただけたのが嬉しくて、涙を流してしまったらしい。誰よりも先生が一番困惑したのは、言うまでもなかった。
『2年生でまほうのじゅぎょうがはじまるから、お父さんがミッドのまほうくんれんじょにつれて行ってくれました。しゃげきまほうやひこうまほうとかいろいろ見れて楽しかったです』
「アレックス君は確か、補助系統の魔法に適正があったわね」
以前リトスが起こした『ぎゅうにく事件』の時、アレックスが危機的状況から無意識に発動させた身体強化魔法。彼は魔力量があまり多くないが、そのおかげか魔力を集めたり、コントロールすることが上手かった。火力はあまりないため、戦闘関連は難しいかもしれないが、できることは色々ある。
彼女は先生として教え子への魔法の教導を考える。教師として、魔導師として、子どもたちには自由に羽ばたいてほしい。そんな風に思いながら、彼女は机の引き出しに入っていた己のデバイスを静かに撫でた。
『たくさんまほうがあっておどろきました。でも、一番びっくりしたのは、ほうきで空をとんでいる人がいたことでした』
「……箒に!?」
感傷的な気分が一気に吹っ飛んだ。
ランディは淡い青紫のショートヘアの、何事にも真っ直ぐな少年である。少年Cとアルヴィンからは呼ばれ、師匠的な存在のせいで、たぶん道を踏み外してしまった。最近俺が暴走したら、クイントが技をかけてくるんです、と以前相談された先生。相手にやめてほしいのか、を問うと、静かに首を横に振られた。これを快感に感じられる男になれば、俺かなり幸せになれると思うんです、と真顔で返された。涙があふれた。
『ほうきにのっている女の子たち。下から見上げると、見えそうで見えないベストアングル。おれは思わず、親指を天に向けて立ててしまっていた。お空は天国につながっているのよ、とむかしおばあちゃんが言っていた通りでした』
「絶対あなたが思っている理由では言ってないよ」
どうやらアレックス君と一緒にいたらしい。それにしても箒? 珍しいデバイスだけど、
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