第四十四話 少年期【27】
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徨わせる。目を瞑ると、疲れからか瞼が重く感じた。
『春休みのできごと』を作文に書きましょう。
クラスが持ちあがりになるため、1年生の終業式に宿題として出したもの。それが、今彼女の手の中にあった。1年生の文章なので、文量はそれほど多くない。本来なら文法の間違いや字の間違いを直しながら、微笑ましく見られる代物であったはずだった。
だが、残念ながら彼女のクラスは色々おかしかった。一人一人作文を読んでいく内に、何かがゴリゴリ削られていく。幻聴なのか、ときどきファンファーレのラッパの音が聞こえてくるような気がしていた。たぶん、彼女のレベルが何かしら上がっているのだろう。
そして、ついに残すところ7人となった。それは最後の戦い。だが一番の強敵グループとも言い直せるので、ある意味ここからが彼女の正念場でもあった。言うまでもなく、最後の作文はテスタロッサ家とゆかいな仲間たちのものであった。
「良い子たちなのは、間違いないんだけど…」
新学年が始まっても、いつも通り元気いっぱいに挨拶をしてくれた子どもたち。宿題はしっかり出してくれるし、任された仕事は丁寧に行う。それに彼らのおかげで、このクラスは一番まとまりがあり、団結力が強い。彼女自身もそんな子どもたちに助けられているため、そこは素直にすごいと感じていた。
だが、如何せん彼らは彼らだった。
「『たのしかったどうぶつえん』。……これが、一番題名が無難そうね」
作者名、アリシア・テスタロッサ。児童数の多い学校でも、人目を引く少女である。次元世界では多い金色の髪だが、透き通るような金の輝きを放ち、真紅の瞳はいつも柔らかく目元を細めていた。子どもらしく、喜怒哀楽と表情が豊かな女の子である。
そういえば、ずっと前に約束した動物園にみんなで行けたんだよ! と、嬉しそうに始業式の日にアリシアが報告に来てくれたことを思い出す。彼女はふふっ、とその時のことを思い起こしながら、作文に目を落とした。
『わたしは、春休みにかぞくとみんなでどうぶつえんに行きました。たくさんどうぶつさんたちが見れて、びっくりしました。とりさんや大きな犬さんやくまさんがいました。わたしはすごくこうふんしました』
「あら、楽しそう。家族みんなで行けたのが嬉しそうだったものね」
『みんなも大こうふんでした。リニスはとりさんにかって、犬さんにもかって、くまさんにはひきわけだったけど、りりしくて、かっこよかったです』
「あれ、待って。あなたたち一体何に興奮していたの?」
そこは闘技場ではないから。動物園は憩いの場所だから。確かリニスって、テスタロッサさんの家の猫さんよね。誰か止めてあげないと、というより熊と引き分ける猫って何。私の想像力では全くビジョンが思い浮かばないよ。先生の頭
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