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少女1人>リリカルマジカル
第四十四話 少年期【27】
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ちの様子を見て。これを奪ってしまっていたかもしれない自身が、許せなかった。そんな彼の心は、あの光景を見た日から変わり、そして新たな夢を作ったのだった。

「事故から半年ってこともあって、双子だけど、同じクラスになったと聞いた」
「えぇ。偶然が重なって2人は生き残ったけど、トラウマになっていてもおかしくないって判断されたから。あの子たちはずっと一緒にいたこともあって、もしクラスを離したら情緒不安定になる可能性がある。テスタロッサさんにも話して、初等部に通っている間は同じクラスになるようになったの」

 兄であるアルヴィンと妹であるアリシア。もし何も聞かされていなければ、この2人に何かあるなんて考えもつかなかっただろう。実際に、こちらが心配する暇がないほど、2人とも楽しそうで、自由すぎた。それでも注意して見ていると、ふと覗かせる影があることを1年間共にあったことで、彼女は感じていた。

 ずっと同じクラスといっても、この学校は選択授業が学年が上がるにつれ増えていく。そうなれば、自然と2人だけの世界は開けていくだろう。なにより、彼らが友人に恵まれているのも救いだった。今のクラスには、特に仲のいい子たちが揃っていることもあり、彼女も学校側も安心していた。

 ちなみに、学校側はこれ幸いと、5年間彼らの担任は彼女でよくね? というか、彼女しかアレまとめられなくね? と最近周りから一目置かれながら、密かに囁かれていたりする。彼女本人は、確実に日々鍛えられていた。


「書類仕事が終わったら、今日も勉強するの?」
「あぁ。正直僕がなれるかはわからないけど、執務官になりたいと思った夢は諦めたくない。腕っぷしはそんなにないし、文武両道なんて言えないけど。それでも、もっと経験を積んでいきたい。僕自身の目で見て、足を動かして、人と関わっていきたいんだ」

 彼の真っ直ぐな言葉に、彼女は優しく微笑む。執務官試験にすでに彼は2度ほど不合格をもらっており、それこそ何十年経っても受からないかもしれない難門。それでも、彼女は心から応援していた。

「うん、頑張ってね。それじゃあ私も、あなたに負けないぐらいに頑張らないと」
「あぁ。……ところで、そんなに気合を入れるような仕事がまだ残っていたのか?」
「えぇ、むしろここからが本番よ。……あの子たちが書いた、『春休みの作文』の閲読という大仕事が」
「…………」

 会話の後、お互いに無言で肩をたたき合って、エールを送りあったのであった。



******



「こ、これで……あと7人」

 彼女は自身の部屋の机に突っ伏しながら、なんとか声を出した。その姿はまるで満身創痍ながら、それでも立ち向かうような気迫を感じさせる。そんな彼女は少し休憩するために身体を椅子に傾け、視線を宙に彷
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