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第三章
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第三章

「あんた、ここに来るまで結構仲間外れだって思ってたろ」
「何でそれを」 
 黒子の奴に言われてぎょっとなった。
「わかるんだよ」
「そりゃわかるさ。俺達だって同じだしな」
「あんた達もなのか」
「そうだよ。今のこの世界ったさ」
「息苦しいだろ」
 小柄な奴が笑いながら僕に声をかけてきた。
「建前ばかりでさ」
「そのうえパラダイスだの楽園だの。絶対に変だって」
「そう考えていたの僕だけじゃなかったんだ」
 僕はそれを聞いて自分だけじゃないんだとわかった。今までそれはおかしいことなんじゃないかって思っていたけれどそれは違っていた。何とここにいる連中も同じだった。
「君達もそうだったんだ」
「そうだよ」
「俺達もさ、最初はあんたと同じこと思っていたんだ」
 背の高い奴はこう言って笑ってきた。
「おかしいんじゃないかって」
「けれどそれが違うんだよ」
 口髭の奴も笑っていた。
「俺達は俺達でおかしくないんだ」
「そういうこと」
 髪の長い奴はそう言いながらサックスを磨いている。やけに大きくて奇麗な。そいじょそこいらにあるみたいなサックスじゃなかった。
「色々な人間がいてもいいじゃない」
「俺達もいてさ。だから」
 目の細い奴が僕に声をかける。
「これからは七人でさ」
「一つの世界でやっていかないか」
「七人か」
 黒子の奴の言葉が妙に心に入って来た。
「一人じゃなくて七人で」
「この世界とは別の世界を作ろうぜ」
「どうだい?それで」
「楽しくやらないか」
「このパラダイスとはまた別のパラダイス」
 僕は六人の言葉を聞いて呟いた。今のこの世界には馴染めないで寂しいっていうか仲間外れな気持ちだったけれどそれでも今は違っていた。何かこの連中と一緒にいると楽しい。それでいて心が休まる。今の世界にはないことをしているのに不思議なことに。
「そうだよ、俺達だけのパラダイス」
「どうだい?」
 また六人から声をかけられた。誘われる言葉を。
「一緒にさ」
「楽しくやろうぜ、七人で」
「一人じゃない」
 僕はすぐには答えなかった。そのかわりにこう呟いた。さっきと殆ど同じ言葉を。
「僕は一人じゃないんだ。それで僕達の世界がある」
「そうさ、これから作る世界がな」
「俺達で」
「わかったよ」
 僕はここまで聞いて頷いた。そうだ、世界は一つじゃない。今のこの世界が合わないのなら別の世界がある、なければ作るんだ。そのこともわかった。わかったのなら話の流れはもう決まっていた。先に進むだけだった。
「わかったよ」
「七人でやっていくんだな」
「うん、決めたよ」
 顔をあげた。自分でも笑っているのがわかる。
「僕でよかったらね」
「よかったらも何もここに来たからにはな」

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