第二章
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第二章
「皆で作ったんだよ」
「一人一人の服をな」
「服を作ったんだ。自分達で」
今は皆服は会社が作ってくれる。好きなだけお店で買えて着ることができる。けれど大体同じ服だ。僕はこのことにも気付いていた。
「そうだよ」
「そんなことできるんだ」
「誰にだってできるんだよ。なあ」
「ああ」
五人が黒子の男の言葉に頷いた。頷きながらお酒をどんどん飲んでいく。その飲み方も飲み屋でも家の中でも見たことのない飲み方だった。84
「そんな飲む方は」
「駄目だっていうのか?」
「身体に悪いよ」
僕はこう彼等に忠告した。
「それに」
「悪いのは承知さ」
「それに。皆と同じことしなくちゃいけないのかよ」
「えっ!?」
今の彼等の言葉は僕にとっては本当に意外な言葉だった。はじめて聞いた言葉だった。
「今何て」
「だから。皆と同じ服着て同じことしてさ」
「何がいいんだよ」
「だってそれは」
「ルールだからか?」
小柄な奴が僕に言ってきた。シニカルに。何時の間にか僕は彼等と似たような派手なタートンチェックの服と帽子を身に着けてとんでもない姿勢で同じテーブルに座っていた。
「それはまあ」
「そんなの糞くらえだ」
「全くだぜ」
口髭の奴も言ってきた。
「誰もが同じになってたまるか」
「そんなの面白くとも何ともないんだよ」
彼等は口々にこう言う。
「そんなのよりな。目一杯ハメを外して」
「楽しくやらないとね」
小柄な奴の弟の髪の長いのが楽しげに笑いながら話す。スパスパと何か吸っている。僕は彼にそれは何かと尋ねた。
「それ何?」
「煙草だよ」
「煙草って?」
「まあ身体に悪いものさ」
「身体に悪いって」
「馬鹿、それでもいいんだよ」
これも僕には信じられない言葉だった。
「身体にいいものばかり飲んで食って。そんなの全然面白くないだろ?」
「それは」
「わからないならわかれよ」
随分強引に言葉をかけられた。
「それでいいな」
「それって」
「ここにもあるぜ」
背の高い奴がここでその煙草ってのを僕に出してきた。白くて先のところが黄土色になった細い小さな棒だ。こんなのを見たのは本当にはじめてだ。
「これなんだ」
「ああ、そうさ。これが煙草ってやつだ」
彼はこう僕に説明する。
「まあ吸えよ。この黄色いところを咥えてな」
「うん」
「先にライダーで火を点ける。そうそう、そうだ」
言われるままにやってみた僕に対して頷いてきた。
「それでいいんだよ。どうだ?」
「何か変な味だね」
皆がやっているみたいに吸ってそれから煙を出してみる。胸がむせかえって苦しい。けれどそれが何か不思議な気持ちになる。
「けれど何か」
「いいだろ、結構」
「やってると止
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