第二十七話 〜夜に舞う喋 中編【暁 Ver】
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廻りを彼らは舞う。犠牲となった仲間を弔うように。仲間を助けだそうとするかのように。同じ種で殺しあう人間を嗤うかのように────
部隊長室の大きなガラス越しに見える月を八神はやては見上げていた。桐生アスナの居場所がわかるかも知れない。そんな吉報をティアナから聞いたのは昨日の朝だ。やれやれと肩の荷が下りたような安堵をしたのも束の間。クロノからの通信で、はやては再度肩を落とすことになる。
予想通り、エイジ・タカムラが情報をリークしたらしい。それは正しく、腹を空かせた野良犬の前に餌を放り投げる行為と等しく。六課を快く思っていない人間は、ここぞとばかりに噛み付いたのだ。その犬の群れを統率するかのように声を荒げたのが──── レジアス・ゲイズだった。
「……あの人は、ほんまにウチが嫌いなんやなぁ」
多少強引だったとはいえ、六課の設立は正規の手段を踏んでいる。クロノを初めとする多くの人たちの後ろ盾があったことも事実だ。だが、違法な手段など何一つ犯してはいない。
「そういうことやないんやろな、きっと」
自分の過去。それを全て清算出来たなどとは思っていない。はやては、きっとそれが原因なのだろうと結論づけた。だが、彼女は少し考え違いをしている。魔力と才能に溢れ、多くの人に支えられ、恵まれた彼女には理解し難い感情──── 嫉妬。ティアナでさえ、一時は身動きがとれないほどに囚われてしまっていた黒い感情。持っている者と持たざる者、その違い。
──── 彼は、はやての管理責任を追及している。勿論、僕もアスナがやったなどとは思っていない。唯……寮から逃亡したのは不味いな。犯人だと糾弾されても反論できない。早急に事態の収拾を図らなければ……査問委員会へかけると言っている。ある筈のない証拠まで揃えられたら目も当てられないな。
はやては、椅子へ腰を下ろすと、久しくお世話になっていなかったシャマル謹製の胃薬へと手を伸ばす。だが、ゆるゆると伸ばされたはやての白い指先は、突然飛び込んできた通信によって動きを止めた。ギンガからの凶報によって。
「三人目ってことは……『おんなじ』なんか?」
『はい……『同じ』です』
はやては一度天井を仰ぐと、今度こそ胃薬を口へと放り込み……親の敵の如く音をたてて噛み砕いた。
ティアナとスバルは寮の玄関を猪のように飛び出すと、ひたすらに六課の隊舎を目指す。二人とも寛いでいたのか、部屋着のままである。
「三、人目って、どういうことかな」
「どういうことも何、もっ。そのまんまでしょうが。ったく……アスナの行方がわからないのを見計らったように……これじゃ、益々アスナが疑われるじゃないっ
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