第二十七話 〜夜に舞う喋 中編【暁 Ver】
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はこちらではなく実家の方にいましたよ。生憎と私も仕事で外へ出ていたものですから」
そうだったのか。それじゃ、その日アスナはお兄さんとは会っていない……アスナの様子が少しおかしくなったのは、その日からだ。一体、その日に何が。
「……お兄さん。落ち着いてよく聞いてください」
言葉は慎重に選ばなければならない。一歩間違えば──── この人は敵になる。それだけは避けなければいけない。あたしは内心の緊張を悟られないように、努めて冷静を装いながら事の顛末を話し始めた。
「なるほど……困りましたね、アスナにも」
あたしの話を聞き終わったお兄さんは、そう言いながら苦笑いした。だが。その心中は穏やかではない筈だ。その証拠に──── 握りしめた拳が震えている。あたしはそれに気づかないふりをしながら、疑問を口にした。どうしても気になっていたことを。
「お兄さん、ボブは今どうしてます?」
そう。アスナのフラッターは、ボブにより遠隔で制御されている。お兄さんの『工房』から。だとしたら、アスナが置かれている今の状況にお兄さんが気づかない筈がないのだ。
「ボブはいますよ。……なるほど、ティアナさんの疑問はわかりました。ですが、フラッターは現在あるテストの検証中なんです」
「テスト、ですか」
「はい。フラッターはここからボブの手によって制御されているのはご存じですよね? ですが、そのデメリットとして、地球に代表される『管理外世界』まで行ってしまうと制御できません。そうなると、フラッターは機能制限されたストレージデバイスとなります」
それは知っている。初めて聞いた時は何故そんな面倒な真似をと思ったものだ。
「本来は管理外世界などへ行く前に、必要であればボブのコピーをインストールすることによって機能低下を防いでいたのですが……それでは、緊急の場合に対処できません。それを解消する為のテスト……遠隔によるインストールテストです。それと、他にもう一つ重要なテストが」
「その、テストの最中だったんですか? だったら今、フラッターにいるボブは、コピー?」
「え? あ、はい。コピーとは言っても、現段階ではフルコピーではありません。ボブの人格はそのままですが、今回はフラッターを一通り制御する為の機能しか持ち合わせていません。謂わば……簡易版ですね。今回のテストが問題なく終われば、フルコピーまで行きたいと考えていたんですが……」
「上手くいかなかったんですね?」
あたしがそう問うと、お兄さんは酷くばつが悪そうに顔を歪めた。当然の予想だ。そうでなければ、今の状況をお兄さんが把握していないわけがない。
「……向こうからコントロールを切られています。転送する段階で一部
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