第一章
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世界の中で今度は他人が皆同じに見えだした。
『皆同じ人間なんだよ』
『差別はいけないことなんだ』
そんな標語もある。こういった言葉も溢れている。溢れ返っていて嫌でも目につく。建前ばかりだった。けれどそれに気付いているのは僕だけみたいだった。本当に僕はおかしくなってしまったんだろうか。いや、おおかしくなることなんかないのに。さらにわからなくなった。そのわからなくなった僕がふらふらと入ったのは見たことのない外観の酒場だった。酒場も飲み過ぎはよくない、お酒は楽しんでといった言葉で満ちているけれどその店は違っていた。何ていうか雑で暗くて怪しい雰囲気だった。あの明るくて楽しげな外観じゃなかった。
その中に入ると中は余計に怪しい雰囲気だった。店の親父なんて見たこともない長い髭を生やしてしかもその髭を青く染めている。街では絶対に見ない顔をしていた。しかも女みたいに化粧までしていた。
「何なんだこの店は」
「おいおい、誰か来たよ」
「これで七人目か」
「七人目!?」
僕はその言葉にふと顔を向けた。すると空の席ばかりのところで真ん中に一つだけ大きな席があってそこに六人ばかり座っている。派手な赤や青や緑や黄色のタートンチェックの服にズボンにネクタイをしていて帽子まで被っている。きちんとした身なりでもないしとんでもない姿勢で座ってもいる。僕は彼等の格好を見て思わず声をあげた。
「そんな服、何処で」
「何処にもねえよ」
これまた見たことのない赤いギターを持った顔に黒子のある男がぼくに答えてきた。
「俺達が作ったんだしな」
「服を!?」
「ああ、そうだよ」
彼は僕にまた答えてきた。
「俺達でな」
「俺達でって」
「この六人でだよ。見ろよ」
今度は周りの他の五人を親指で差してみせる。小柄のとか口髭を生やしているのとか背の高いのとか目の細いのとか髪の長いのとか色々いる。小柄な奴と髪の長いのは見たところ兄弟みたいだ。雰囲気が結構似ていた。
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