三幕 惜別のベアウルフ
5幕
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(本当にこの子、一体どんな育ち方をしてきたんだろう)
考えていると、視界の端で獣が蠢いた。
ルドガーは急いでエルとフェイを自分の側に引き寄せた。
だが、ソウは立ち上がることもなく、フェイを見つめるように頭を傾けただけだった。
『そうか……あんただったんだな、マルシアが言ってた〈妖精の子〉ってのは……』
「ん」
『マルシアが言ってた……冷たいオトナたちの仕打ちで心を停めた、可哀想な子だって……外に出して、楽しいことを目一杯教えてやりたいって……』
闇色に染まっているはずのソウの目が、深い慈しみを湛えたように見えた。
『なあ、あんた……今、自由か? 楽しく、やれてるか?』
「――タノシイ、かは、分からない。スキなこと、スキな時に、やってる」
『そ、か……よかったな、マルシア……あんたが見守ってた子は、いま……自由、だ、って』
ソウの息が徐々に細くなっていく。フェイが手を伸べると、ぱき、と赤い爪が折れた。
フェイが憐憫を湛えてルドガーを見上げてくる。
ルドガーは一度目を閉じ――懐中時計を構え、精霊の力を鎧として纏った。
黒い槍をソウに突き立てた。ソウは黒い灰のようなモノに分解され、やがて、消えた。フェイの手に欠けた赤い爪が遺された。
パキン。世界にヒビが入る。ヒビは天地四方に広がり、世界がブラックアウトした。
まだ夢の中にいるような心地で、フェイ・メア・オベローンは立ち上がった。
手には、魔物化したソウの爪の欠片。フェイはそれを無言でブレザーのポケットに入れた。
『間もなく、列車がトリグラフに到着します。お降りの方は忘れ物がございませんよう――――』
はっとした。あんなにも恐れた駅への到着がすぐそこまで来ている。
どうしよう、とフェイは立ち尽くす。ルドガーやエルはああ言ってくれたが、それで恐れの全てを拭い去れたわけではない。
「「だいじょうぶ」」
はっとする。フェイの前で、ルドガーとエルが、全く同じ顔で笑っていた。
ジュードたちのいる車両に戻るルドガーたちにフェイも続いた。
ジュードはルドガーを見るや「大丈夫?」と座席を立ってルドガーの前まで来た。
そんな優しいジュードに、ルドガーが事情を説明する内に、――列車はトリグラフ中央駅に入ってしまった。
フェイはドアを前にして立ち尽くす。
ジュードが、レイアが、アルヴィンが。ローエンが、エリーゼが、駅へ降り立つ。けれどもフェイには彼らに続いて降りる勇気が出ない。足が縫い合わされたように動かない。
(ホントにサヨナラにならない?)
するとルドガーとエルが先に降りて、フェイに手を伸べた。筋肉のついた異性の腕と、ぷにぷにした少女
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