軍神、燕人、昇竜、そして……
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抑え付けてもう一段階、強さを上げようとした所で、
「おい」
突如彼は剣を下げてこちらを睨み一言。
「お前、本気だせよ。じゃなきゃ負けるぞ」
そう言ってゆっくりと彼は左手を前に出し剣を水平に構えた。途端に己が脳髄から警鐘が鳴り響く。
殺気とも呼べる圧倒的な闘気が彼から溢れ出し、私の身体を覆うように纏わりついた。
大地を蹴る音は無く、しかし視界に見える彼が大きくなった。近づいて来たのだ、と思う頃には相手の武器を弾くには遅く、瞬時に、意識せずに本能のみで身体が横を向いた。
彼が放ったのはただの突きだった。ただし間合いの外から、私の目でも捉えるのが難しいほど速く突撃して。
ギリギリで躱した私の頭の中でカチリと音がして何かが切り替わる。渦巻いていた思考が投げ捨てられ、ただ相手を倒す方法のみを導き出し始めた。
下から、彼の視界には入らないであろう場所から渾身の力を込めて偃月刀で斬り上げる。しかし鮮血が舞う事は無く、そこにはもう消えたように姿は無かった。
円軌道を描いて移動した彼の姿を見切っていた私は、後ろからの先ほどまでの戦いよりも数段速く、力強い袈裟切りを身体を捻り柄で受け止め、互いの武器が甲高く鳴いた。
その音を合図として支点をずらし、最速の石突を放つと彼の腕にあたった、だが同時に動いていたのか死角によって見えなかった脚に蹴りを喰らう。
二人ともがその場から動かずに何合も打ち合うが、ここは互いに必殺の距離のはずだった。しかし決めることが出来ない。悉くを弾きあい、避けあい、ぶつかり合っている。
相手はほぼ片腕で、重さが減っている。
私は踏ん張れない、鋭さが落ちている。
歯痒さからか自然と今放つことのできる一番強い一撃をぶつけ合って、その反動で身体が弾き飛び距離が大きく離れる。
声一つ聴こえない静寂の中、互いに無言で目線を交わす。一瞬ここが戦場ではないかとの錯覚を覚えてしまった。
私は笑った。楽しい。もっと続けよう。
彼は笑った。同じ気持ちなのかもしれない。
ならば続けようどちらかが倒れるまで――
「そこまでなのだ愛紗!」
「武器を降ろしてほしい、徐晃殿」
†
趙雲と鈴々が膠着状態に入った俺達の間に入り試合は終わった。
試合が終わると見物していた俺の隊に配属される予定の義勇兵たちは一斉に地に膝をついて頭を垂れ、最前列の一人が口を開く。
「我らはあなたと共に戦いたい。その武に我らは従いたい」
空気が張り裂けるような大声で、唸るように叫んだ身体の大きな男をただ見つめて漸く気付く。
そうか、愛紗はこれを狙って試合をしかけてきたのか。
「これで俺たちは一つの隊となった。一人でも犠牲にならないよう、共に強くなろう」
きっといい部隊にしてみせよう。一人でも多く生き
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