軍神、燕人、昇竜、そして……
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たら殺す、みたいに聞こえるんだが。
「やれやれ、徐晃殿は己より弱い兵相手なら戦えるが、自身より強い女に迫られると逃げるような意気地なしらしい」
「そうなのかー。お兄ちゃん、かっこわるいのだ」
黙っていたら神経を逆なでするような声で趙雲が言い、続けて鈴々に落胆される。兵たちの前で言われたのでクスクスとそこかしこから笑い声が上がっていた。
しかし臆病風に吹かれている俺はただ沈黙するしか出来なかった。愛紗の武を目の当たりにしていたからこそ。
「やはり男など……その程度なのでしょうな」
心底下らない、と言いたげな冷やかな眼差しでこちらを一瞥してから踵を返してどこかへ歩いていく趙雲。彼女から放たれた言葉は、俺の心に苛立ちの波を立てるのに十分だった。
「いいだろう……そっちも全力でこいよ愛紗。それと倒したらお前だ鈴々。趙雲、お前はその後でも十分だ。まあどうせ、そのまま逃げるんだろうけどな」
そう言って離れて武器を構える。ここまで侮辱されて黙ってられるか。
趙雲はピタリと脚を止め、すっと目を細めてこちらを睨んだ。負けずと睨み返し、互いに向ける昏い感情と視線が交錯し合う。
しかし一つ疑問が起こった。才色兼備な彼女が誰かを簡単に貶めるだろうか。俺に非があるんじゃないだろうか。
「やる気になって頂けたようで結構。しかし――」
思考に潜り込む前に愛紗が武器を構え、そして、
「私に簡単に勝てる、心外ですね」
怒気と闘気が綯い交ぜになって溢れ出し、あまりに圧倒的なプレッシャーに逃げ出したくなる。
だがしかし、俺も引くことなど出来やしない。
覚悟を決めて神経を研ぎ澄ませてから愛紗に向けて駆けだして……己が武器を振り下ろした
†
大上段からの大振りから始まったこの戦いは、一体どれくらいの時間が経ったのだろうか。
偃月刀を振る、彼が身体を軽く捻って避ける、流れに任せて剣を薙いで来る、返す刃にて大きく弾く。
正直ここまでとは思わなかった。しかも彼にはまだまだ余裕がある。
互いの武器が大きく鳴いて、弾かれる二つの身体と開く距離。息を荒げることも無く、静かに、深く平常時と変わらない呼吸と共に秋斗殿に言葉を掛ける。
「なかなかやるではないですか」
闘う中、徐々に力も速さも上げていっていた。彼の力を測るために。私とある程度戦えることを見せれば、兵達も彼を認めると思ったからこそ。
だがこれは思わぬ収穫だった。本気になったところも見てみたい。闘ってみたい。
武人としての本能か、赤く轟々と燃えたぎる炎が心を焦がし、もっと強く、もっと速くと囃し立てる。だがまだだ、自身が本気を出してしまえばすぐに終わってしまうかもしれない。それでは彼の力量を正確に測る事など出来やしない。
そろそろもっと力を上げて……
逸る心を
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