理想を求める者
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
間に合うかな」
突如聞こえた真後ろからのありえない呟きに驚く。
この人は気付いていたのか。ぼそっと彼が紡いだ言葉が聞こえたのはきっと私たち二人だけ。雛里ちゃんも目を丸くしている。
徐晃さんは三つと言った。きっと関羽さんも劉備様も二つまでは分かってる。でも三つ目は普通気づかない。いや、まだ気付けない。
打開策は三つを抑えて成る。
一つ目、兵が短期間に連続して入れ替わるために錬度の格差のある兵士による統率の乱れ。義勇軍はこの乱れた世と劉備様の仁徳で普通以上に志願してきているだろう。
関羽さんと張飛さんの二枚看板がいたからこそ今までもったと言っていい。これは目的意識の統合とわざと格差をつけた練兵によって回避できる。
もう一つは公孫賛さんとの関係の摩擦。支援に頼りすぎていることから打ち切られると潰れる。
ぎりぎりの範囲の譲歩をしてもらっていることだろう。しかし支援を減らすよりも向こうの得を増やせば大体は解決される。私たちならしてみせる。
最後は、これは先二つの根底にもなる広い問題。
義勇軍志願兵の増加による全体的な村の働き手不足と税率の低下。
今の世は義勇軍が立つことは珍しくない。故郷を守るためなのだから自然なこと。
その後は? 兵士となる者、将となる者、帰らぬ人になった者、それを機に違う地に移る者等たくさん出る。
そこから先はどうなるか。若い人の少なくなった村は併合するしかない。あぶれた人は? もし違う賊が攻めてきたら? 飢饉がおこったら?
気付かないのも仕方ない。民の不満はじわじわと広がっていく毒と同じなのだから。
さらに悪いことに今は民を救っているのだから為政者の人も責められないのだ。
予測し、気付かせ、献策し、防ぐのが私たち軍師の仕事。
では徐晃さんはなぜ気付けたのか。
今はいい。それよりもあれを確認しておこう、劉備様に。いや……雛里ちゃんが聞くみたいだ。
「劉備様は……何をもってこの乱世にお立ちになりましたか?」
そう尋ねた雛里ちゃんの問いかけに対する劉備様の答えを、私は期待の気持ちをなんとか抑えつつ待っていた。
諸葛亮ちゃんも雛里も気付いていたか。見落としているだろう事を。さすがは希代の天才軍師だな。
問題、課題は多いものの、軍が立ちいかないわけではないのだからあと一押しでこの二人は劉備についていくだろう。彼女達が聞いた噂通りなのかどうか、目的を確認するのが最終確認というわけか。
「私は……誰もが笑って暮らせる争いのない優しい国を作る。それが目標だよ。そのために犠牲になってしまう兵士さんもいる。でもその命を背負って私は暖かい国を作りたい」
凛とした声と決して曲がらないという決意の籠った瞳。
この世界の女の子は強い。きっとすでに死んでいく義勇兵を数多
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ