理想を求める者
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場に立ちすくむ。
やわらかな笑顔に圧倒されるなんて初めての事だった。英雄の放つ覇気といえばいいのか、思わず膝をついてしまいそうになる。
本物だな。一言喋っただけ、ただそれだけで空間を支配していた。
「しょ、諸葛孔明です」
「ほ、鳳士元といいましゅ」
慌てて自己紹介する希代の軍師二人もその覇気に飲み込まれているのが分かる。
自分の名前を紡ぐのでやっとなようで、声は震え、カチコチに身体が強張っていた。
「徐公明と申します。この子達の護衛を頼まれてここまで送らせていただきました」
「……」
なんとか普段の拍子に敬語を取ってつけて自身も自己紹介を行ったが、劉備は何故か厳しい表情で押し黙ってしまった。俺たちは何か粗相をしてしまったのだろうか。
「桃香様? 如何しました?」
関羽の問いかけにも無反応でこちらを見据え、部屋全体をピリピリと緊迫した空気が包む。
一つ対応を間違えれば首が飛んでしまうのではないかというほどに。
「だめだぁ!やっぱり堅苦しすぎるのは無理だよ愛紗ちゃん!」
突然素っ頓狂な声をあげた劉備は関羽に涙目で訴えかけ、俺達は先ほどの姿とのギャップにポカンとするしかなかった。
「桃香様!賢者二人がいらしてくれているのにあなたという人は……」
わなわなと震え始める関羽は怒りのボルテージが徐々に上がって、その顔はみるみるうちに赤く染まっていく。やべー、正直すげー怖い。母親がマジ切れした感じだ。
「ご、ごごごめんなさーい!でもこんな可愛い子達の前で重い空気にしちゃうなんて耐えられないよー」
しゅんと関羽に謝る劉備を見て場の雰囲気が和らいで、諸葛亮ちゃんと雛里もほっと一息ついて緊張がほぐれたみたいだった。
これを天然でしているのか。バカというか器が広いというか……もはや完全に劉備のペースだな。
「ごめんね。長旅で疲れただろうからゆっくりくつろいでほしい。お菓子とお茶をどーぞ。」
先ほどの覇気は何処へやら、にへらと笑い、棒立ちのままの俺たちを椅子に座るよう促してからお茶を勧める。まだ怒っている関羽も今回の主役は軍師候補二人であるためかしぶしぶといった感じで劉備の後ろに立った。
俺も真似して二人の後ろに立ち、話を聞こう。
え? いかにも護衛っぽくてかっこいいからだよ。
それぞれの自己紹介が終わり、劉備様から義勇軍の今置かれている状況などの説明を聞いていた。
「今の私たちの現状はこんな感じかなー」
危うい。この軍はぎりぎりだ。劉備様の話を聞いてこの軍の詳細がわかったけど、あと半月私たちが来るのが遅かったら兵士や民たちの不満が手遅れになっていただろう。
でも打開策はある。雛里ちゃんも考えついたみたいだ。二人とも登用してもらえたらうまくいくだろう。
「危ういな。だが三つ抑えれば
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